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よくあるご質問

よくあるご質問の一覧です。

質問

回答

  • A 行政書士は、よく「街の法律家」などと言われます。
    私たちは、一般の方に最も近い視点で、身近な法務に関するお困りごとの相談に乗り、お客様に安心をお届けする仕事であると考えております。

    具体的には、次の1~3の業務をする専門家です。

    1 「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
    官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署、公安委員会、検察審査会、労働基準監督署など)に提出する書類
    その書類のほとんどが許認可に関するもの
    例として、「建設業許可申請書」、「飲食店営業許可申請書」、「法人設立」、「倉庫業登録申請書」などがあります。

    2 「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
    権利の発生、存続、変更、消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類
    例として、「遺産分割協議書」、「各種契約書(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇傭、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)」、「念書」、「示談書」、「協議書」、「内容証明」、「告訴状」、「告発状」、「嘆願書」、「請願書」、「陳情書」、「上申書」、「始末書」、「定款」などがあります。

    3 「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
    社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる書類
    例として、「実地調査に基づく図面類(位置図、案内図、現況測量図など)」、「各種議事録」、「会計帳簿」、「貸借対照表」、「損益計算書等の財務諸表」、「申述書」などがあります。

    ※他の法律で制限されているものについては、業務を行うことはできません。

    行政書士の独占業務
    行政書士法第1条の3第1項 官公署に提出する書類作成、権利義務又は事実証明に関する書類作成
    行政書士法第1条の3第2項反対解釈 他の法律で制限されている部分以外なら全て業務にできます。

    行政書士の非独占業務
    行政書士法第1条の4第1項第1号 提出手続代理・書類作成、聴聞・弁明の機会の付与の手続代理
    行政書士法第1条の4第1項第2号 不服申立手続代理・書類作成(特定行政書士に限る)
    行政書士法第1条の4第1項第3号 契約代理(締結交渉+契約書作成+契約締結)
    行政書士法第1条の4第1項第4号 書類作成相談
  • A 「法律家」とは、法律に関する専門的な知識を有し、法律を取り扱う人の総称であって、特定の資格を指すのではなく、法律のプロフェッショナル全般を表す包括的な概念です。

    狭義では、「弁護士、裁判官、検察官の法曹三者」を指します。
    広義では、「法学研究者、法科大学院教授、大学教授、法制局職員」など、実務以外で法律に携わる人も含まれます。
    さらに、「司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁理士、土地家屋調査士、税理士、海事代理士など、法律系国家資格を有する弁護士以外の特定事務受任者、いわゆる隣接法律専門職者(法律系7士業)」も含まれます。

    ●日本政府は、弁護士以外の法律系7士業を「隣接法律専門職者」として例示しています。
    海外では一般に「法律家=弁護士」という認識が多いため、日本政府は、政策文書、制度説明、海外向けの資料などで、日本の法律専門職制度について説明する際、弁護士以外の職種も法律に関わる専門職として並列に扱われることを示しています。

    ●総合法律支援法によれば、「民事・刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを基本理念とする総合法律支援構想を具体化」する目的のもと、「弁護士以外の者で」「法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者」が「隣接法律専門職者」とされ、弁護士と並列されています。

    「隣接法律専門職者」とは、「弁護士、弁護士法人及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人以外の者であって、法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者」とされています(総合法律支援法第1条)。

    ●住民基本台帳法によれば、弁護士を含む法律系8士業(弁護士及び弁護士以外の法律系7士業)を「特定事務受任者」として、弁護士と並列されています。

    「特定事務受任者」とは、「弁護士(弁護士法人及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。)、司法書士(司法書士法人を含む。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。)、税理士(税理士法人を含む。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。)、弁理士(弁理士法人を含む。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)をいう。」とされています(住民基本台帳法第12条の3第3項)。

    つまり、弁護士を「法律家」と呼ぶなら、「法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者」である法律系7士業も、弁護士と並列の立場にあることから、「法律家」と呼ぶことができます。

    ●法律系国家資格者の一般的呼称は次のとおりです。

    ・弁護士:法律家
    ・司法書士:暮らしの法律家
    ・行政書士:街の法律家
    ・社会保険労務士:労働の法律家
    ・弁理士:知的財産の法律家
    ・土地家屋調査士:不動産登記の法律家
    ・税理士:税の法律家
    ・海事代理士:海の法律家
  • A 法律に関する行為であっても、次のような場合には、法律系国家資格を要しません。
    ただし、各資格法により、一定の行為を「業として」行うことは、無資格者には禁止されています。
    また、資格法の構造により、「資格不要となる場合がある士業」と「無資格では行えない士業」があります。

    【法律系8士業】

    ●弁護士:無資格者は、「報酬を得る目的で」「事件に関して」「業とできない」のだから、「何れかの要件」を満たさないなら資格不要(弁護士法第72条)。

    ●司法書士:無資格者は、「有償/無償」「業務/非業務」にかかわらず行ってはならない(司法書士法第73条第1項)。

    ●行政書士:無資格者は、「報酬を得て」「業として行えない」のだから、「有償かつ非業」または「無償かつ業」なら資格不要(行政書士法第19条第1項)。

    ●社会保険労務士:

    ・1号(手続き代行)は、無資格者は、「報酬を得て」「業として」行ってはならないのだから、「業でない」なら「有償/無償」にかかわらず資格不要(社会保険労務士法第27条)。

    ・2号(帳簿作成)は、無資格者は、「報酬を得て」「業として」行ってはならないのだから、「業でない」なら「有償/無償」にかかわらず資格不要(社会保険労務士法第27条)。

    ・3号(相談)は、独占業務ではないから「無資格」で行ってよいので資格不要。

    ●弁理士:無資格者は、「報酬を得て」「業とできない」のだから、「有償かつ非業」または「無償かつ業」なら資格不要(弁理士法第75条)。

    ●土地家屋調査士:無資格者は、「有償/無償」にかかわらず「業とできない」のだから、「業でない」なら「有償/無償」にかかわらず資格不要(土地家屋調査士法第68条第1項)。

    ●税理士:無資格者は、「有償/無償」「業務/非業務」にかかわらず行ってはならない(税理士法第52条)。

    ●海事代理士:無資格者は、「有償/無償」にかかわらず「業とできない」のだから、「業でない」なら「有償/無償」にかかわらず資格不要(海事代理士法第17条第1項)。

    【上記から海事代理士を除いて、次の3士業を足したのが法律系10士業】

    ●公認会計士:無資格者は、「報酬を得て」「業として行えない」のだから、「有償かつ非業」または「無償かつ業」なら資格不要(公認会計士法第2条)。

    ●不動産鑑定士:無資格者は、「有償/無償」「業務/非業務」にかかわらず行ってはならない(不動産鑑定士法第36条)。

    ●中小企業診断士:名称独占業務(中小企業支援法第11条第1項柱書)。

    【その他】

    ●宅地建物取引士:無資格者は、「有償/無償」にかかわらず「業を営んではならない」のだから、「有償かつ非業」または「無償かつ非業」なら資格不要(宅地建物取引業法第12条第1項)。

    ●マンション管理士:名称独占業務(マンション管理適正化法第43条第1項)。

    ●測量士:無資格者は、「有償/無償」にかかわらず「業を営んではならない」のだから、「有償かつ非業」または「無償かつ非業」なら資格不要(測量法第55条の14第1項)。

    ●通関士:名称独占業務(通関業法第40条第2項)。

    ●技術士:名称独占業務(技術士法第3条)。

    ●社会福祉士:名称独占業務(社会福祉士及び介護福祉士法第48条第1項)。

    ●介護福祉士:名称独占業務(社会福祉士及び介護福祉士法第48条第2項)。
  • A 他士業との共同業務は次のとおりです。

    ●弁護士(弁護士法第72条
    但書)
    ・紛争性のない契約書・協議書の作成・提出・相談
    ・内容証明郵便の作成・提出・相談
    ・官公署への書類作成・提出・相談

    ●司法書士(司法書士法第73条但書)
    ・会社設立における定款の作成・相談
    ・会社設立における公証役場での定款認証手続き
    ※会社設立における法務局での登記申請手続きの代理(登記申請書の作成・提出代理)は司法書士のみ

    ●社会保険労務士(社会保険労務士法第27条但書)
    ・就業規則作成・相談(帳簿でもないし、社会保険や労働保険に関わる手続き書類でもないが疑義あり)
    ※提出は事業主のみ
    ・補助金申請書の作成・相談
    ※提出は社会保険労務士のみ
    ※助成金申請書の作成・相談・提出は社会保険労務士のみ

    ●弁理士(弁理士法第75条但書)
    ・著作権登録申請書の作成・相談
    ・プログラム著作物等の著作権登録申請書の作成・相談
    ・著作権譲渡契約書の作成・相談
    ・知的資産経営報告書の作成・相談
    ・ライセンス契約書の作成・相談
    ・利用許諾契約書の作成・相談
    ※提出は弁理士のみ

    ●土地家屋調査士(土地家屋調査士法第68条)
    ・農地転用許可申請(農地法第3条・4条・5条など)の書類作成・提出・相談
    ・開発許可申請(都市計画法)の書類作成・提出・相談
    ・道路位置指定申請の書類作成・提出・相談
    ・道路占用許可申請の書類作成・提出・相談
    ・官民境界確定手続き(公有地・法定外公共物の払下げなど)の書類作成・提出・相談
    ※登記申請のための調査・測量・法務局への表示に関する登記申請は土地家屋調査士のみ

    ●税理士(税理士法第51条の2)
    ・ゴルフ場利用税の書類作成・相談
    ・自動車税の書類作成・相談
    ・軽自動車税の書類作成・相談
    ・自動車取得税の書類作成・相談
    ・事業所税の書類作成・相談
    ・石油ガス税の書類作成・相談
    ・不動産取得税の書類作成・相談
    ・道府県たばこ税の書類作成・相談
    ・市町村たばこ税の書類作成・相談
    ・特別土地保有税の書類作成・相談
    ※提出・納税手続きの申告代理は税理士のみ

    ●海事代理士(海事代理士法第17条第1項但書)
    ・海上運送事業の許可申請書類の作成・提出・相談
    ・内航海運業の登録申請書類の作成・提出・相談
    ・造船業・舟艇製造業の届出書類の作成・提出・相談
    ・港湾運送事業の許可申請書類の作成・提出・相談
    ・マリーナ等の施設使用許可書類の作成・提出・相談
  • A 条文上、包括的業務範囲を持ち、代理権が認められる士業は弁護士、行政書士(平成13年)です。

    弁護士法第72条所定の法律事件に関する法律事務の例外として、次のとおり、一部が開放されています。
    ・債権回収業者:特定金銭債権回収受託権が付与された(平成10年)
    ・行政書士:権利義務文書作成代理権、事実証明に関する文書作成代理権が付与された(平成13年)
    ・税理士:訴訟出頭・陳述権が付与された「補佐人」(平成13年)
    ・弁理士:特定侵害訴訟事件訴訟代理権が付与された「付記弁理士」(平成14年)
    ・司法書士:簡易裁判所代理権が付与された「認定司法書士」(平成15年)
    ・海事代理士:訴訟出頭・陳述権が付与された「海事補佐人」(平成15年)
    ・土地家屋調査士:民間紛争解決手続代理権が付与された「認定土地家屋調査士」(平成17年)
    ・社会保険労務士:個別紛争解決代理権が付与された「特定社会保険労務士」(平成19年)
    ・行政書士:聴聞代理権、弁明代理権が付与された(平成20年)
    ・海事代理士:個別労働関係紛争解決手続代理権が付与された(平成21年)
    ・行政書士:行政不服申立代理権が付与された「特定行政書士」(平成26年)
  • A 業際は次のとおりです。

    ・権利義務書類作成:弁護士、行政書士、認定司法書士(簡裁訴額範囲)

    ・事実証明書類作成:行政書士のみ

    ・裁判所書類作成:弁護士、司法書士

    ・裁判所代理:弁護士、認定司法書士(簡裁訴額範囲)

    ・行政不服審査手続:弁護士、特定行政書士

    ・年金申請書類作成:弁護士、社会保険労務士、行政書士(無報酬)

    ・就業規則作成:弁護士、社会保険労務士、行政書士(疑義あり)

    ・告訴状・告発状作成手続-警察署・労基署・公安委員会:弁護士、行政書士

    ・告訴状・告発状作成手続-検察審査会:弁護士、司法書士、行政書士

    ・告訴状・告発状作成手続-検察庁:弁護士、司法書士

    ・事故調査:行政書士のみ

    ・任意保険申請・後遺障害申請:弁護士、行政書士(弁護士費用特約対象)

    ・慰謝料請求:弁護士、行政書士(交渉を除く(相手方が任意に応じる場合は除く))、認定司法書士(簡裁訴額範囲)

    ・内容証明:弁護士、行政書士、認定司法書士(簡裁訴額範囲)
    (相手方が所在不明でも同意なく取付可)

    ・示談交渉:弁護士、行政書士(相手方が任意に応じる場合)、認定司法書士(簡裁訴額範囲)

    ・契約代理(締結交渉・契約書作成・契約締結):弁護士、行政書士、認定司法書士(簡裁訴額範囲)
  • A いいえ、行政書士は、「隣接法律専門職者」であり、法制度上、弁護士と並列の関係にあります。
    包括業務を独占業務としている点も、弁護士と同様です。

    【法務省】
    ●「弁護士法も、それから社会保険労務士法等の隣接法律専門職種の業法も、いずれも法律でございます。
    上位規範、下位規範の関係にございません。
    ただ、法律専門事務の取り扱いにつきまして弁護士法七十二条が一般的に弁護士以外の者による取り扱いを禁じておりますので、他の法律専門職の業法に弁護士法七十二条の特別法となる部分が出てくる、ただそれだけにすぎない、そういう関係でございます。
    弁護士法七十二条が「他の法律」と規定しておりますのは、このような一般法、特別法の関係が存するということを確認的に示したものでございまして、弁護士法が今御指摘の他の法律よりも上位の規範であるということはございません。」という解釈を示しています(第162回国会 衆議院 厚生労働委員会 第26号 平成17年6月8日)。
  • A いいえ、行政書士は、総務省の公権解釈や学説において書類作成に付随する協議、交渉、締結の契約代理が含まれているのみならず、そもそも民法上の任意代理人が有償委任契約に基づき示談交渉を行うことは法的に認められており、弁護士以外の他士業と異なり、「契約その他に関する書類(契約書、その他に契約書以外の権利義務に関する書類、事実証明に関する書類)を代理人として作成できる」権限を付与されている以上、和解契約書もその独占業務たる書類の一つであることから、事件性のない状態であれば相手方との協議から交渉、締結、そして書面作成に至る一連の行為が契約代理権の範囲内として当然に含まれており、契約書作成プロセスとしての示談交渉を行えないとする理由にならず、和解契約書を締結するために代理人として慰謝料請求したり、過失割合などを交渉して契約締結を行い、和解契約書を作成することは予防法務ですので適法です。

    弁護士法第72条所定の「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」という条文により、「行政書士は、示談交渉などを行うと非弁行為になるからできない」と言われがちですが、同条の成立には報酬性、事件性、業務性の全ての要件を満たす必要があり、特に事件性については、最高裁決定、弁護士法を所管する法務省の公権解釈から明らかですが、「「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件」、及びこれらに準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するなど、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件(個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等の諸般の事情を考慮して判断されるべきもの)」という状態でないならば、事件性を満たさず、非弁行為に当たりません。

    行政書士は、「「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件」、及びこれらに準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するなど、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件(個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等の諸般の事情を考慮して判断されるべきもの)」という事件性が高まるに至る前段階においては、事件性を帯びる高度な蓋然性がない限り、予防法務の専門家として紛争の未然防止に尽力して国民の権利利益の実現に資する使命がありますが、仮に事件性(紛争性、紛議、争訟性、法的紛議、法律問題、法律事件などの類似する名称を問わず)が高まれば、それ以上の交渉はできなくなるも、この点は弁護士であっても同じであって、弁護士の場合は、裁判所を通じた法的手段を用いることができるにすぎず、更なる交渉を特別にできるわけではないが、事件性が高まれば、行政書士は辞任して、本人が以降の交渉を続けるか、弁護士、認定司法書士、司法書士に引き継ぐかなどを検討することになります。

    【最高裁】
    ●「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件」という解釈を示しています(最一小決平成22年7月20日 刑集64巻5号793頁)。

    【法務省】
    ●「例えば列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義を有するものであること、言い換えれば、事件というにふさわしい程度に争いが成熟したものであることを要するとしております。
    つまり紛争性がある程度成熟して顕在化しているものであれば、法第72条の規制の対象になるけれども、そうでない場合には、つまり事件性がない場合には法第72条の規制の対象にはならない」という解釈を示しています(法曹制度検討会(第24回)議事録 平成15年12月8日)。

    ●「この「一般の法律事件」につきましては、いわゆる事件性があるということが必要と解されまして、事件性のない法律事務を取り扱うことは同条に違反しないと解釈しております。
    なお、この事件性とは、文献によりますと例えばこのように書かれておりまして、今読み上げました列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義を有するものであること、言いかえれば、事件というにふさわしい程度に争いが成熟したもの」という解釈を示しています(第162回国会 衆議院 厚生労働委員会 第26号 平成17年6月8日)。

    ●「弁護士法第72条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関し、一般に、「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうとされるところ、同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び…行政庁に対する不服申立事件」に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するものであるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられ、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。」という解釈を示しています(AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について 令和5年8月1日)。

    ●「弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関して「鑑定…その他の法律事務」を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることを禁止しており、ここにいう「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務の発生する案件をいうものと解される。
    その上で、同条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に例示列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件」、及びこれらに準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するなど、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件であるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられる。
    そして、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等の諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。」という解釈を示しています(ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について 令和8年8月21日)。

    【総務省】
    ●「ここでいう「代理人として」とは、契約等についての代理人としての意であり、直接契約代理を行政書士の業務として位置づけるものではないが、行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものであると解される。
    またこの規定により、行政書士は契約書に代理人として署名し、契約文言の修正等を行うことができることとなる。」という解釈を示しています(詳解 行政書士法第5次改訂版 令和6年3月25日発行 57頁 総務省自治行政局行政課の二瓶博昭氏の平成13年9月号掲載の論文「地方自治」第646号 行政書士法の一部改正について 平成13年9月5日発行 92から96頁)。

    【学説】
    ●「本号の“法定”業務は上記の契約書文言の代理確定という範囲であるが、法定外業務としては本号の規定付帯的に、“契約締結代理”が合法的な行政書士業務たりうる」という解釈を示しています(行政書士法コンメンタール新15版 令和7年10月20日発行 50から51頁 東京都立大学法学部卒の行政法学者で東京都立大学名誉教授の兼子仁博士)。

    【東京都行政書士会】
    ●「弁護士法第72条は「争訟性の有る法律事務」に限定すべきであると主張し、「契約締結代理業務」は「争訟性の無い法律事務」で弁護士の独占業務では無いとして第2号の行政書士業務に取り込んだ。
    司法制度改革の中で、関係省庁、最高裁等の立会いの下に「弁護士の独占業務は『争訟性の有る法律業務』に限られる」と確認された事も行政書士にとっての大きな勝利である。」という解釈を示しています(行政書士とうきょう 平成13年9月号)。

    ●「第2号の文言中、契約書等を代理して作成するのではなく、代理人として作成すると規定した。この「人」の1字の重みを理解しなければならない。
    第2号の代理は「契約締結代理業務」が前提として存在し、その代理人として契約書を作成する意味であると解する事ができるからである。
    「契約締結代理」「契約相談」が新たな行政書士業務となったのである。
    行政書士は、今回の法改正で「契約締結代理」「契約交渉代理」等の業務が法定業務とされた。
    それにより、行政書士は当然に法律家に名実共に成ったのであるから、ADRに積極的に活用されなければならない。」という解釈を示しています(行政書士とうきょう 平成13年10月号)。
  • A いいえ、遺産分割協議書の作成の依頼を受け業務にできるのは弁護士と行政書士のみであって、司法書士は遺産分割協議書そのものを作成することができません。
    司法書士が行えるのは、不動産登記に必要な範囲に限った法務局提出書類の作成に留まります。
    不動産登記以外の預貯金や自動車などに関しては仮に分割内容が記載されていたとしても、それは正式な遺産分割協議書とはならず、法的効力はありません。
    そのため、業際の関係上、弁護士または行政書士に依頼する必要があります。

    ●弁護士:行政書士の行える範囲はもちろん、不動産登記や訴訟性があっても対応可能です。

    ●行政書士:不動産、預貯金、自動車などの全てにおいて合意形成前でも形成済みでも関与でき、合意形成前なら代理人として協議・交渉して遺産分割協議書を作成できます。
    ただし、不動産の登記はできず、訴訟しなければ合意形成が取れないほどの紛争性があるものは事件性があると評価され除かれます。

    ●司法書士:相続登記に必要な範囲内のみであり、遺産分割協議の交渉や調整ができず、遺産分割協議書そのものを作成できません。
    登記とは関係なく、預貯金や自動車などの分割内容を書き添えたとしても、その部分に法的効力はなく、弁護士または行政書士の職印をもった正式な遺産分割協議書の作成が必要となります。
    登記の手続きに関する相談はできても、遺産分割の相談はできません。

    ●税理士:相続税申告に必要な範囲内で相続税申告書の作成はできるが遺産分割協議書の作成はできず、相続税の申告に関する相談はできても遺産分割の交渉や調整はできません。
  • A はい、通常、ナンバープレートの交換(封印)は運輸支局に車を持ち込む必要がありますが、特定の研修を受けた行政書士(丁種会員)であれば、登録手続きだけでなく、自宅や勤務先の駐車場に出向いてナンバープレートを交換・封印することができます。

    以下は、令和8年2月現在の東京の場合です。

    ■<車庫証明>

    ●自動車保管場所証明

    ○新規登録・移転登録・変更登録の際に必要。

    ・「使用の本拠の位置」と「保管場所の位置」に変更がない場合は車庫証明は不要。
    ・「使用の本拠の位置」は変更しないが「保管場所の位置」を変更する場合は、車庫証明ではなく「自動車保管場所届出」となります。

    ●自動車保管場所届出

    ○軽自動車や、特定の条件下の普通自動車で必要。

    ・軽自動車は車庫証明が不要で、「自動車保管場所届出」となります。
    ・普通自動車で「使用の本拠の位置」は変更なく「保管場所の位置」のみを変更する場合も、車庫証明が不要で「自動車保管場所届出」となります。

    ●申請先

    ○自動車の保管場所を管轄する警察署。

    ・受付時間:8時30分~16時30分
    ・交付期間:申請から中2~3営業日
    ・申請手数料:2,400円
    ・軽自動車の場合:軽自動車協会での登録後に「自動車保管場所届出」となります(手数料不要)。

    ●必要書類

    ○「自動車保管場所証明申請書」
    ※軽自動車の場合は「自動車保管場所届出書」

    ○保管場所の使用権原を疎明する資料

    ・自己所有:「自認書」
    ・他人所有:「保管場所使用承諾書」
    ※賃貸駐車場の場合は、契約者・契約車庫住所・契約期間が分かり、1ヶ月以上の契約期間が残っていれば「賃貸契約書(コピー)」でも可能で、1ヶ月未満の場合は所轄警察署に相談すると振込履歴のある通帳でも可能な場合もあります。

    ○保管場所の所在図・配置図

    ・自動車保管場所証明申請書または自動車保管場所届出書の「保管場所標章番号欄」に旧自動車保管場所標章番号を記入した上で、「自動車の使用の本拠の位置」と「自動車の保管場所の位置」のいずれも、旧自動車と変更がない場合は「所在図」を省略できますが「配置図」の省略はできません。

    ・自動車保管場所証明申請書または自動車保管場所届出書の「保管場所標章番号欄」に旧自動車保管場所標章番号を記入した上で、自動車保管場所証明申請時点で旧自動車を保有している場合は「所在図」を省略できますが「配置図」の省略はできません。

    ・自動車保管場所証明申請書または自動車保管場所届出書の「保管場所標章番号欄」に旧自動車保管場所標章番号を記入した上で、軽自動車の自動車保管場所届出(新規)の場合は届出時点で旧自動車を保有しているか、または届出日の前15日以内に保有していた場合は「所在図」を省略できますが「配置図」の省略はできません。

    ・「自動車の使用の本拠の位置」と「自動車の保管場所の位置」が同一の場合も、「所在図」を省略できますが「配置図」の省略はできません(平成23年7月19日より適用)。

    ○使用の根拠が確認できるもの(個人は居住、法人は営業が確認できるもの)

    ・住民票、印鑑証明書、運転免許証、公共料金の領収書(ガス・電気・水道)、登記簿謄本、自動車検査記録事項(軽自動車)

    ●適用除外地域

    ○普通自動車で「自動車保管場所証明申請」が不要な地域
    ・桧原村、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村

    ○軽自動車で「自動車保管場所届出」が不要な地域
    ・福生市、武蔵村山市、羽村市、あきる野市、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、大島町、八丈島町、桧原村、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村

    ■<自動車登録>

    ●移転登録(自家用車名義変更)

    ○旧所有者の必要書類

    ・車検証
    ・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
    ・委任状(代理人申請の場合に必要で実印押印)
    ・印鑑(本人申請の場合に必要で実印)
    ・譲渡証明書(実印押印)

    ○新所有者の必要書類

    ・車庫証明(適用除外地域を除き証明日から概ね1ヶ月以内(最大40日)のもの)
    ・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
    ・委任状(代理人申請の場合に必要で実印押印)
    ・印鑑(本人申請の場合に必要で実印)
    ・申請書OCRシート(陸運局で配布)
    ・手数料納付書(陸運局で配布)

    ●移転登録(自家用車名義変更で使用者が異なる場合)

    ○旧所有者の必要書類

    ・車検証
    ・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
    ・委任状(代理人申請の場合に必要で実印押印)
    ・印鑑(本人申請の場合に必要で実印)
    ・譲渡証明書(実印押印)

    ○新使用者の必要書類

    ・車庫証明(適用除外地域を除き証明日から概ね1ヶ月以内(最大40日)のもの)
    ・住民票(発行から3ヶ月以内のコピー可)
    ・新使用者の委任状(申請書に記名があれば不要だが代理人申請の場合に必要な書類であって押印不要ではあるけど実務上は受領する)
    ・申請書OCRシート(陸運局で配布)
    ・手数料納付書(陸運局で配布)

    ○新所有者の必要書類

    ・委任状(代理人申請の場合に必要で実印押印)
    ・印鑑(本人申請の場合に必要で実印)
    ・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

    ●移転登録(相続の場合)

    ◆単独相続

    ○上記移転登録書類にプラスして以下の書類が必要となります。

    ・遺言書
    ※原本とコピー
    ※公正証書でない場合は家庭裁判所の検認済みのもの。
    ・遺産分割協議書(実印押印)、調停調書、審判書、判決謄本
    ※遺言書のない場合は相続する自動車の価格が100万円以下であることを証する「査定書」を添付した場合は「遺産分割協議成立書」でも可。
    ・印鑑証明書(相続人のもので発行から3ヶ月以内のもの)
    ・委任状(代理人申請の場合に必要で相続人からのもので実印押印)
    ・戸籍謄本・除籍謄本等(被相続人の死亡と相続人全員の記載のあるもの)
    ※婚姻などによって戸籍謄本に相続人の記載がない場合は「原戸籍」等が必要。
    ※「遺産分割協議成立申立書」の場合は代表相続人記載のもの。

    ◆共同相続

    ○上記移転登録書類にプラスして以下の書類が必要となります。

    ・印鑑証明書(相続人全員のもので発行から3ヶ月以内のもの)
    ・委任状(相続人全員からのもので実印押印)
    ・使用者の住民票(所有者と使用者が異なる場合に必要でコピー可)
    ※印鑑証明書でも可。
    ・戸籍謄本・除籍謄本等(被相続人の死亡と相続人全員の記載のあるもの)
    ※婚姻などによって戸籍謄本に相続人の記載がない場合は「原戸籍」等が必要。

    ●移転登録費用(自家用車)

    ○自動車検査印紙代:500円

    ○ナンバープレート代-管轄が変わる場合

    ・大型:2,980円(ペイント式)、6,000円(字光式)
    ・普通:1,980円(ペイント式)、5,600円(字光式)
    ・軽自動車:2,100円(ペイント式)、字光式不可
    ・二輪・軽二輪:800円(ペイント式)、字光式不可

    ○ナンバープレート代-希望番号の場合

    ・ペイント式(受注生産で6営業日程度):6,000円(大型)、5,000円(普通)、5,200円(軽自動車)
    ・字光式(受注生産で7営業日程度):10,000円(大型)、9,000円(普通)、10,000円(軽自動車)
    ※管轄ごとに指定された抽選対象番号は毎週月曜日に抽選を実施。

    ○全国版図柄入りナンバー(モノクロ):13,200円(大型)、8,500円(普通)、8,600円(軽自動車)
    ※1,000円以上の任意の寄付によりカラーとなります(花柄)。
    ※字光式不可。

    ○地方版図柄入りナンバー(モノクロ):13,200円(大型)、8,500円(普通)、8,600円(軽自動車)
    ※1,000円以上の任意の寄付によりカラーとなります(地域デザイン)。
    ※字光式不可。

    ○ご当地ナンバー:世田谷(平成26年11月17日)、杉並(平成26年11月17日)、江東(令和2年5月11日)、葛飾(令和2年5月11日)、板橋(令和2年5月11日)、江戸川(令和7年5月7日)

    ●環境性能割(移転登録時に車種・年式によって要する自動車取得税)

    ○各自動車税事務所(9時~17時)に問い合わせ

    ・品川自動車税事務所:03-3471-6670
    ・足立自動車税事務所:03-3883-2543
    ・練馬自動車税事務所:03-3932-7321
    ・多摩自動車税事務所:042-522-8271
    ・八王子自動車税事務所:042-691-6351
    ※「行政書士氏名、行政書士電話番号、車種(名称・グレード)、初年度登録年月、型式、種別区分番号」を伝えて環境性能割を確認。
    ※環境性能割は令和8年3月31日をもって廃止。

    ●変更登録(自家用車で住所変更等の場合)

    ○必要書類および留意点

    ・車庫証明(適用除外地域を除き証明日から概ね1ヶ月以内(最大40日)のもの)
    ・住民票(発行から3ヶ月以内のもの)
    ※転居を繰り返している場合は車検証の住所とのつながりを証明する「戸籍の附票」、「住民票の除票」等が必要。
    ・委任状(代理人申請の場合に必要で押印不要)
    ・車検証(原本)
    ・申請書OCRシート(陸運局で配布)
    ・手数料納付書(陸運局で配布)
    ・戸籍謄(抄)本(婚姻等で氏が変わった場合に必要で発行から3ヶ月以内のもの)

    ※所有者と使用者が別で、使用者のみ使用の本拠の位置の変更がある場合も所有者の委任状が必要。
    ※所有者と使用者が別で、使用者の氏名または名称のみの変更(使用者の住所、使用の本拠の位置に変更がない)の場合は所有者の委任状も車庫証明も不要で、記載事項変更として印紙代無料。
    ※車検証記載の住所から複数回転居を繰り返している場合は現住所を証明する住民票や印鑑証明書に加えて、住所のつながりを証明する「戸籍の附票」、「住民票の除票」等が必要となり、保存期間が経過して証明書類が取得できない場合は誓約書の提出が必要。

    ●変更登録費用(自家用車)

    ○自動車検査印紙代:350円

    ○ナンバープレート代-管轄が変わる場合

    ・大型:2,980円(ペイント式)、6,000円(字光式)
    ・普通:1,980円(ペイント式)、5,600円(字光式)
    ・軽自動車:2,100円(ペイント式)、字光式不可
    ・二輪・軽二輪:800円(ペイント式)、字光式不可

    ○ナンバープレート代-希望番号の場合

    ・ペイント式(受注生産で6営業日程度):6,000円(大型)、5,000円(普通)、5,200円(軽自動車)
    ・字光式(受注生産で7営業日程度):10,000円(大型)、9,000円(普通)、10,000円(軽自動車)
    ※管轄ごとに指定された抽選対象番号は毎週月曜日に抽選を実施。

    ○全国版図柄入りナンバー(モノクロ):13,200円(大型)、8,500円(普通)、8,600円(軽自動車)
    ※1,000円以上の任意の寄付によりカラーとなります(花柄)。
    ※字光式不可。

    ○地方版図柄入りナンバー(モノクロ):13,200円(大型)、8,500円(普通)、8,600円(軽自動車)
    ※1,000円以上の任意の寄付によりカラーとなります(地域デザイン)。
    ※字光式不可。

    ○ご当地ナンバー:世田谷(平成26年11月17日)、杉並(平成26年11月17日)、江東(令和2年5月11日)、葛飾(令和2年5月11日)、板橋(令和2年5月11日)、江戸川(令和7年5月7日)

    ●陸運局と管轄(8時45分~11時45分、13時~16時)

    ○各事務所の所在地および管轄地域

    ・東京運輸支局(品川・世田谷ナンバー):千代田区、中央区、港区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、大島支庁、三宅支庁、八丈支庁、小笠原支庁
    品川区東大井1-12-17
    050-5540-2030

    ・足立自動車検査登録事務所(足立・江東・葛飾・江戸川ナンバー):台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区
    足立区南花畑5-12-1
    050-5540-2031

    ・練馬自動車検査登録事務所(練馬・杉並・板橋ナンバー):新宿区、文京区、中野区、杉並区、豊島区、北区、板橋区、練馬区
    練馬区北町2-8-6
    050-5540-2032

    ・多摩自動車検査登録事務所(多摩ナンバー):立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、西東京市
    国立市北3-30-3
    050-5540-2033

    ・八王子自動車検査登録事務所(八王子ナンバー):八王子市、青梅市、日野市、福生市、羽村市、あきる野市、西多摩郡
    八王子市滝山町1-270-2
    050-5540-2034

    ●登録手続の流れおよび出張封印

    ○陸運局の回り方

    1 関東陸運振興センターにて「申請書OCRシート(陸運局で配布)」、「手数料納付書」、「税申告書」を入手。

    2 印紙を購入して、申請書を作成して「手数料納付書」に印紙を貼付。

    3 運輸支局で番号札を引き、受付に申請書類を提出。
    ※出張封印の場合は「封印受領書正副2通」、「出張封印確認書2通(ナンバー後返納の場合)」も提出。

    4 交付窓口で名前を呼ばれるので車検証や他の書類を受け取り、記載に間違いがないか確認。
    ※出張封印の場合は「封印」を受領。

    5 都税事務所で税申告の手続き、「車検証」と一緒に「税申告書」を提出。
    ※移転登録で環境性能割等が発生する場合は「納付書」をもらい、納付してナンバープレート交換がなければ終了。

    6 ナンバープレート交換がある場合は、関東陸運振興センターに戻り、「旧ナンバープレート」を返納して、「車検証」を提出。
    ※出張封印の場合は「出張封印確認書(登録窓口経由のもの)」を提示して、「封緘、ビス、ナンバープレート」を受領。

    7 「新ナンバープレート」を購入して車両に取り付け、「車台番号」の確認を受けて、封印。

    8 「車検証」を受領して終了。

    ○出張封印

    1 「検査証」と「記録事項」が同一であることを確認。
    2 「車台番号の拓本か写真撮影」を実施。
    3 ナンバー交換を行い施封して、後部ナンバープレートに行政書士証票をかざして共に写真撮影。
    4 「封印取付台帳」の作成、「新検査証(記録事項)の写し」を保存、「車台番号」・「施封後の後部ナンバー画像」を5年間保存。
    5 関東陸運振興センターに登録から15日以内(15日が閉庁日なら翌開庁日まで)に「旧ナンバープレート」を直接返納するとともに「出張封印確認書」を提出。
    6 東京都行政書士会・封印管理特別委員会に毎月10日(10日が土日祝の場合は前営業日)の17時までに「封印取付報告書」、「封印受領書(写し)」を提出。

    以下の場合は、出張封印をすることができません。
    ・字光式ナンバープレートに交換する場合
    ・車台番号の刻印の確認が困難な自動車の場合
    ・ナンバープレートの取付けネジが錆びついていて取り外しができない場合
    ・ナンバープレートの取付けネジが防犯ネジかつ対応する工具をお持ちでない場合

    ○再々委託

    ◆東京会会員が委託元甲の場合

    1 再々委託元甲が関東陸運振興センターに戻り、「出張封印確認書(登録窓口経由のもの)」を提示して、「封緘、ビス、ナンバープレート」を受領。
    2 再々委託元甲が「確約書正副2通(甲欄に職印押印)」、「車検証」、「新ナンバープレート」、「封印ビス」等、「封印取付作業依頼書1通(職印押印)」を再々委託先乙事務所に郵送。
    3 再々委託先乙が「車台番号の拓本か写真撮影」を実施。
    4 再々委託先乙がナンバー交換を行い施封して、後部ナンバープレートに行政書士証票をかざして共に写真撮影。
    5 再々委託先乙が「旧ナンバープレート」、「封印取付作業完了報告書1通(再々委託先乙が職印押印)」、「確約書1通(再々委託先乙が乙欄に職印押印)」、「車台番号の拓本または写真」、「後部ナンバープレートに行政書士証票をかざして共に撮影した写真」を再々委託元甲に返送。
    6 関東陸運振興センターに登録から15日以内(15日が閉庁日なら翌開庁日まで)に「旧ナンバープレート」を直接返納するとともに「出張封印確認書」を提出。
    7 再々委託元甲が東京都行政書士会・封印管理特別委員会に毎月10日(10日が土日祝の場合は前営業日)の17時までに「封印取付報告書」、「封印受領書(写し)」を提出。
    ※確約書は一度、交わした行政書士間では2回目以降は交わす必要はないが、甲乙が入れ替わる場合は改めて交わす必要があるので、予定がある場合は予め甲乙両方のパターンで交わしておいても構わない。

    ◆東京会会員が委託先乙の場合

    1 再々委託元甲が「確約書正副2通(甲欄に職印押印)」、「車検証」、「新ナンバープレート」、「封印ビス」等、「封印取付作業依頼書1通(職印押印)」を再々委託先乙事務所に郵送。
    2 再々委託先乙が「車台番号の拓本か写真撮影」を実施。
    3 再々委託先乙がナンバー交換を行い施封して、後部ナンバープレートに行政書士証票をかざして共に写真撮影。
    4 再々委託先乙が「旧ナンバープレート」、「封印取付作業完了報告書1通(職印押印)」、「確約書1通(乙欄に職印押印)」を再々委託元甲に送付。
    ※東京都行政書士会・封印管理特別委員会に報告不要(東京会の封印受領証を使用していない)。
    ※確約書は一度、交わした行政書士間では2回目以降は交わす必要はないが、甲乙が入れ替わる場合は改めて交わす必要があるので、予定がある場合は予め甲乙両方のパターンで交わしておいても構わない。
    ※「車台番号の拓本か写真撮影」と「後部ナンバープレートに行政書士証票をかざして共に撮影した写真」の送付が必要かは再々委託元甲の所属行政書士会による。
    ※その他、再々委託元甲の所属行政書士会ルールに従う。

    以下の場合は、出張封印をすることができません。
    ・字光式ナンバープレートに交換する場合
    ・車台番号の刻印の確認が困難な自動車の場合
    ・ナンバープレートの取付けネジが錆びついていて取り外しができない場合
    ・ナンバープレートの取付けネジが防犯ネジかつ対応する工具をお持ちでない場合
  • A 予約は必須ではありませんが、ご予約の方を優先させていただいております。
    外出していることもございますので、事前のご予約をお勧めいたします。
    お電話かメールにてお問い合わせください。
  • A 初回のご相談は、1時間まで無料とさせていただきます。
    1時間を超えた場合、30分を1単位として5,000円を頂戴いたします。
  • A 付近に時間貸駐車場(有料)が複数ございますが電車でのご来所が望ましいです。
  • A ご希望がありましたら、お客様のご自宅やご指定の場所(駅近くの喫茶店など)にもお伺いし、ご相談を承りますので、ご安心ください。

    初回のご相談は、1時間まで無料とさせていただきます。
    1時間を超えた場合、30分を1単位として5,000円を頂戴いたします。

    交通費は、事務所所在地を基準とした実費相当額を頂戴いたします。

    店舗などへの会計が発生する場合は、お客様負担でお願いしております。

    ※遠隔地への出張、長時間の拘束などの場合は、上記の他に日当や宿泊費等をいただく場合がありますので、お問い合わせください。
  • ■ 次のとおりです。

    ■<弁護士法>

    ●(弁護士の職務)

    第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
    2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

    ○弁護士法第3条第1項の規定で、弁護士の業務は次のとおり。

    ・訴訟事件、非訟事件に関する行為
    ・審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為
    ・一般の法律事務

    ○弁護士法第3条第2項の規定で、弁護士は次の業務もできる。

    ・弁理士の事務
    ・税理士の事務

    ●(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

    第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

    ○弁護士法第72条の規定で、次に該当するものは非弁行為となる。

    1 弁護士又は弁護士法人でない者は
    2 報酬を得る目的で
    3-1 訴訟事件、非訟事件
    3-2 審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件
    3-3 一般の法律事件
    に対して
    4-1 法律事務(例として、鑑定、代理、仲裁、和解)を取り扱うこと
    4-2 法律事務(例として、鑑定、代理、仲裁、和解)を周旋をすること
    を業とすることができない。

    ○ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
    と、あるから、弁護士法または例えば行政書士法に別段の定めがある場合は適用されない。

    ■<弁護士法所定の事件性>

    ◆事件性必要説

    【法務省、総務省、日本司法書士会連合会、日本行政書士会連合会、学説】
    ●弁護士法第3条の法律事務と第72条の法律事件の文言の違いなどから事件性を必要とする見解を示しています。

    【東京都行政書士会 「行政書士必携~他業種との業際問題マニュアル」】
    ●裁判所の調停や訴訟にまで発展していない段階:行政書士が解決のために「協議」や「話し合い」を主導することは弁護士法に違反しない。
    ・裁判所の手続が必要なほどに「事件」として争いが成熟したものは弁護士案件。
    ・裁判所の手続が必要なほどに達していないものであれば、行政書士も対応できるというのが行政書士業界の見解。

    【最高裁】
    ○事件性
    ●交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件(最一小決平成22年7月20日 刑集64巻5号793頁)。

    ○業務性
    ●弁護士法第72条にいわゆる「業とする」とは継続して行う意思のもとに同条列記の行為をなすことをいうものであって、具体的になされた行為の多少は問うところではないと解する(最二小決昭和34年12月5日 刑集13巻12号3174頁)。

    【高裁】
    ○事件性
    ●同条のいう「その他一般の法律事件」とは、同条に列挙された事件と同視しうる程度に法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は、新たな権利義務関係の発生する案件をいうと解するのが相当である(広島高判平成27年9月2日 判例タイムズ1432号143頁)。

    【地裁】
    ○報酬性
    ●「報酬」とは、法律事務の取扱いのための対価をいい、額の多少や名称を問わないが、法律事務の取扱いとの間に直接的又は間接的に対価関係が認められることが必要であると解される。(東京地判平成29年2月20日 判例タイムズ1451号237頁)。

    ○事件性
    ●紛争性成熟説:「一般の法律事件」とは、同条に列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがありあるいは疑義を有するものであること、いいかえれば「事件」というにふさわしい程度に争いが成熟したものであることを要すると解すべきである(札幌地判昭和45年4月24日 判例タイムズ251号305頁)。

    ●簡易少額説:紛争の実体・態様に照らして、一般人がこれに当面しても、通常、弁護士に依頼して処理することを考えないような簡易で少額な法律事件は、弁護士法72条にいう「訴訟事件…その他一般の法律事件」に含まれない(札幌地判昭和46年2月23日 昭和43年(わ)第584号)。

    ●法的紛争事件説:権利義務や事実関係に当事者間に法的主張の対立があり、法的な紛争解決を必要とする事件(東京地判平成5年4月22日 判例タイムズ829号227頁)。

    ◆事件性不要説

    【日本弁護士連合会】
    ●「条解弁護士法 第4版」 日本弁護士連合会調査室 弘文堂 2007年の615頁で、弁護士法第3条の法律事務と、ほぼ同じとする見解を示しています。

    【高裁】
    ●同条例示の事件以外の、権利義務に関し争があり若しくは権利義務に関し疑義があり又は新たな権利義務関係の発生する案件を指し、右規定にいわゆる「その他の法律事務」とは、同条例示の事務以外の、法律上の効果を発生変更する事項の処理を指すものと解すべきである(東京高判昭和39年9月29日、大阪高判昭和43年2月19日、東京高判平成7年11月29日、大阪高判平成26年6月12日など)といった高裁の判例が若干あります。
  • ■ 次のとおりです。

    ■<行政書士法>

    ●第1条の3(業務)
    行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
    2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

    ○「官公署」とは「国、地方公共団体およびその他の公の団体の諸機関の総称」をいい、代表的なところとして、省庁・都道府県庁・市町村役場・警察署・裁判所・法務局・労働基準監督署・保健所・出入国在留管理局などがある。
    つまり、裁判所も含まれているが、個別法で除外されていると、行政書士は提出する書類の作成ができないことになります。
    この「官公署」を最初から行政官庁のみとする解釈は条文上にも規定がなく誤りと言えます。

    ○行政書士法第1条の3第1項の規定で、行政書士の業務は次のとおり。
    1 行政書士は
    2 他人の依頼を受けて
    3 報酬を得て
    4 次の業務をする
    ・官公署に提出する書類を作成すること
    ・権利義務に関する書類を作成すること
    ・事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成すること
    ※上記3つの書類は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものも含まれる。

    ○行政書士法第1条の3第2項の規定で、業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

    ●第1条の4(業務)
    行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。
    ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
    一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
    二 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
    三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
    四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
    2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

    ○行政書士法第1条の4第1項の規定で、次の事務も業とすることができる。

    1 行政書士は
    2 他人の依頼を受けて
    3 報酬を得て
    4 次の事務も業務とできる

    1号
    ・行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続について代理すること。
    ・行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等と受理に関して行われる意見陳述のための手続(例として、聴聞、弁明の機会の付与の手続)において当該官公署に対してする行為(弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。

    2号
    ・行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理すること。
    ・行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について官公署に提出する書類を作成すること。

    3号
    ・行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。

    4号
    ・行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

    ※上記の書類は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものも含まれる。

    ○2号業務に関しては行政書士法第1条の4第2項の規定で、特定行政書士に限られる。

    ○ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

    【総務省】
    「詳解 行政書士法第5次改訂版」、地方自治制度研究会編、ぎょうせい、令和6年3月25日発行の57頁に、行政書士法を所管する総務省の公権解釈の内容が下記のとおり記載されています。

    総務省自治行政局行政課の二瓶博昭氏の平成13年9月号掲載の論文「地方自治」第646号、行政書士法の一部改正について、地方自治制度研究会、平成13年9月5日発行の92から96頁で、「ここでいう「代理人として」とは、契約等についての代理人としての意であり、直接契約代理を行政書士の業務として位置づけるものではないが、行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものであると解される。
    またこの規定により、行政書士は契約書に代理人として署名し、契約文言の修正等を行うことができることとなる。」という解釈を示しています。

    【学説】
    東京都立大学法学部卒の行政法学者で東京都立大学名誉教授の兼子仁博士も「行政書士法コンメンタール新15版」、兼子仁、北樹出版、令和7年10月20日発行の50から51頁で、「本号の“法定”業務は上記の契約書文言の代理確定という範囲であるが、法定外業務としては本号の規定付帯的に、“契約締結代理”が合法的な行政書士業務たりうる」という解釈を示しています。
  • ■ 次のとおりです。

    「詳解 行政書士法第5次改訂版」、地方自治制度研究会編、ぎょうせい、令和6年3月25日発行の57頁
    「地方自治」第646号、行政書士法の一部改正について、地方自治制度研究会、平成13年9月5日発行の92から96頁

    行政書士法の一部改正について
    二瓶博昭(総務省自治行政局行政課)

    一 はじめに
    行政書士法の一部を改正する法律(平成一三年法律第七七号。以下「改正法」という。)が本年六月二二日に成立し、同年六月二七日に公布された。
    本法は、平成一四年七月一日から施行されることとなっている。

    行政書士法は、その制定および数次にわたる改正の多くは議員立法により行われてきた経緯があり、今回の改正についても、議員立法により行われたものである。
    すなわち、本年四月一〇日、自由民主党政務調査会の総務部会において改正法案が了承された後、各党間の調整を経て、六月五日に衆議院総務委員会委員長提案として国会に提出され、六月七日に衆議院本会議で賛成多数により可決、六月二一日に参議院総務委員会で可決、翌六月二二日に参議院本会議で賛成多数により可決・成立した。

    今回の改正は、行政に関する手続の円滑な実施および国民の利便向上の要請への的確な対応を図るため、目的規定を整備し、行政書士が作成することができる書類に係る官公署への提出手続を代理することおよび行政書士が作成することができる契約その他の書類を代理人として作成すること等の業務を行政書士の業務として明確化するとともに、日本行政書士会連合会が行政書士の登録をしたときに行政書士証票を交付するものとすることを内容とするものである。

    以下、本改正の主要な内容について説明することにする。
    なお、本文中意見にわたる部分は、筆者の私見であることを予めお断りしておく。

    二 主な改正内容
    (1) 目的規定の整備
    改正の第一点は、行政書士法の目的規定を整備したことである。
    すなわち、行政書士法は「行政書士の制度を定め、その業務の適正を関ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、あわせて、国民の利便に資することを目的とする」こととされたものである(改正後の行政書士法(以下「新法」という。)第一条)。

    行政書士は、官公署に提出する書類の作成等のみならず、私人間の権利義務や事実証明に関する書類の作成についても、その業務範囲とするところである。

    しかし、改正前の行政書士法(以下「旧法」という。)第一条では「行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、国民の利便に資することを目的とする」とされており、この規定のままでは「行政に関する手続の円滑な実施に寄与し」の部分のみに着目して解釈した場合、行政書士法第一条の二との関係で、ともすれば本条が「官公署に提出する書類」に過度に重点が置かれており、したがって、行政書士の業務のうち「権利義務または事実証明に関する書類」を作成することば行政書士法の目的を逸脱しているのではないか、との誤解を招く可能性があった。

    このため、新法第一条においては、「あわせて」と記載することにより、行政書士法は「行政に関する手続の円滑な実施に寄与」することとあわせて、「国民の利便に資すること」を目的としていることをあらためて明確化したものである。

    つまりこの規定の整備は、私人間の権利義務や事実証明に関する書類の作成についても、行政書士が大きな役割を担っていることをあらためて明示したものといえる。

    (2) 業務の明確化
    改正の第二占は、行政書士が作成することができる書類の官公署への提出手続について代理すること、および行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成することが、新たに行政書士の業務として位置づけられたことである(新法第一条の三)。

    旧法では、行政書士は、第一条の二において、官公署に提出する書類その他の権利義務又は事実証明に関する書類を作成することができると規定されるとともに、第一条の三において、官公署に提出する書類の提出手続の代行及び当該書類の作成に関する相談に応ずることができることとされていた。

    今回の改正では、第一条の二に規定する業務については変更はなく、第一条の三において、他人の依頼を受け報酬を得て、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項を除き、次の各号に掲げる事務を業とすることができる朝こととされたところである。

    以下、新法第一条の三の各号の内容について説明する。
    ① 行政書士が作成することができる書類を官公署に提出する手続について代理すること(新法第一条の三第一号)
    旧法第一条の三においては、官公署に提出する書類の提出手続の代行及び当該書類の作成に関する相談について規定されていたが、このうち書類の提出手続の代行に関しては、許認可申請や届出の書類を依頼人に代わって官公署に提出する際に、窓口において書類の不備等があった場合、あくまで提出手続を代って行う「使者」としての行政書士は、依頼人の意思を確認しなければ訂正をすることができないものとされてきた。

    しかし、依頼人にとっても、このような手順を踏むことは非常に煩雑であり、円滑な手続に支障があることから、従来より許認可申請や届出等の手続業務について、代理権を付与することが求められてきたものである。

    そこで、今回の改正において、行政書士が作成することができる書類の官公署への提出手続について代理することができることとされたものである。

    この規定により、行政書士は許認可申請、届出等の手続について代理する場合には、自ら代理人として提出書類の訂正等を行うことができることとなるものであり、行政に関する手続きの円滑な実施が促進されることが期待されるところである。

    ② 行政書士が作成することができる契約その他の書類を代理人として作成すること(新法第一条の三第二号)
    本号の業務については、今回の改正において新たに規定されたもので、行政書士が代理人として契約その他の書類を作成することができることとしたものである。

    ここでいう「代理人として」とは、契約等についての代理人としての意であり、直接契約代理を行政書士の業務として位置づけるものではないが、行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものであると解される。

    またこの規定により、行政書士は契約書に代理人として署名し、契約文言の修正等を行うことができることとなる。

    なお、本号に規定する業務は、行政書士でない者でも行うことができる非独占業務として新たに位置づけられたが、今回の改正では、第一条の二および第一九条の規定については何ら改正されていないところであり、第一条の九に規定する業務については、従来どおり行政書士の独占業務として位置づけられている。

    したがって、これまでの独占業務が非独占業務となることはないものと解される。

    ③ 行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること(新法第一条の三第三号)
    この業務については、旧法第一条の三においても行政書士の業務として規定されていたものであり、従来どおり、第一条の二の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について、相談に応ずることができることとしたものである。

    (3) 行政書士証票の導入について
    改正の第三点は、行政書士証票の導入に関することである。
    従来の規定では、日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を行ったとき、申請者に対し書面による通知を行うとともに、日本行政書上会連合会会則で規定する行政書士登録証を本人に交付することとされていた。

    しかし、この行政書士登録証は行政書士名簿に登録されたことを証明するものにすぎず、行政書士の資格証明をするものではないため、例えば行政書士が官公署に書類の提出手続を行う際、行政書士であることの身分証明書の提示を求められたときに、提示できないという不都合が生じていた。

    そこでこのような問題を解消するために、日本行政書士会連合会は行政書士の登録をしたときには、行政書士証票の交付をしなければならないこととしたものである(新法第六条の二第四号)。

    一方、行政書士の登録が抹消されたとき、又は行政書士が第一四条第一項の規定により業務の停止処分を受けた場合には、その者、その法定代理人又はその相続人は、遅滞なく、行政書士証票を日本行政書士会連合会に返還しなければならないこととされた(新法第七条の二第一項)。

    さらに、第一四条第一項の規定により行政書士の業務の停止処分を受け、行政書士証票を返還した行政書士が、行政書士の業務を行うことができることとなったときは、その申請があれば、日本行政書士会連合会は、行政書士証票をその者に再交付しなければならないこととされた(新法第七条の二第二項)。

    なお、行政書士証票に関し必要な事項については、日本行政書士会連合会の会則で定めることとされている(新法第七条の三)。

    (4) その他
    前述のとおり、改正法はすでに平成一三年六月二七日に公布されているが、施行日は平成一四年七月一日とされている。これは、改正に伴って必要な所定の準備、特に、行政書士証票の導入にあたっては、日本行政書士会連合会の会則等について規定の整備等を行う必要があることから、所要の準備期間を設けたものである。

    なお、附則の第二条において、改正法の施行について必要な経過措置が規定されている。すなわち、行政書士証票の交付にあたり、改正法の施行の際、現に行政書士法第一四条第一項の規定により業務の停止処分を受けている行政書士に対しては、当該行政書士が行政書士の業務を行うことができることとなる前に行政書士証票を交付してはならないとされている。

    三 おわりに
    以上が改正法の内容であるが、行政書士、行政書士会および日本行政書士会連合会の関係者のみならず、行政書士制度の運用に携わる多くの関係者が、今回の改正の趣旨を十分に理解され、御協力いただくことにより、改正法の円滑な運用が回られることを強く期待するところである。
  • ■ 次のとおりです。

    「行政書士法コンメンタール新15版」、兼子仁、北樹出版、令和7年10月20日発行の50から51頁

    契約書類の「代理人」作成と“契約代理”業務

    1) 2001(平成13)年の本条旧二号追加改正で、行政書士が作成できる「契約その他に関する書類を代理人として作成すること」と書かれたことは、契約書など民事書類の作成という独占業務を改めて活性化させ、民事契約分野の行政書士業務を行政手続分野と並べて主要なものとなしうる効果をも期待されているようである。

    ただし、本号の規定振りはあくまで契約書の代理人作成という書類作成に事寄せた書き方であって、それが立案プロセスで日弁連の了解を得られた成果だということなので(保岡興治衆議院議員「改正行政書士法と今後の展望」日本行政2002年2月号9頁)、解釈問題が大いに残されたことはやむをえまい。

    まず、契約書類の代理人作成は文字どおりには多分に権利義務書類の作成にほかならず、本法1条の2の独占業務であるため、その意味では本法1条の3旧二号が非独占であることから非行政書士の営業を合法ならしめることはないものと解される。

    2) 契約書等を「代理人として作成する」こと自体は事実行為を指し、民法99条1項が「代理」は「意思表示」について効果を示すとしているところから、行政書士が契約文言の修正記載や代理人署名をなしうる点に、依頼者本人に代わって契約書文言における意思表示内容の確定を任されているものと解される。

    しかしそれを超えて、合意形成にいたる契約締結上の代理業務はどうかに関しては、所管官庁筋の解釈が、本号は「直接契約代理を行政書士の業務として位置づけるものではないが、行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものである」と公示されている(詳解57頁、二瓶博昭「行政書士法の一部改正について」地方自治2001年9月号95頁)。

    その趣旨は、本号の“法定”業務は上記の契約書文言の代理確定という範囲であるが、法定外業務としては本号の規定付帯的に、“契約締結代理”が合法的な行政書士業務たりうる、ということと理解できよう。(ほぼ同旨、阿部・未来像18頁)。

    もっとも、民事法関係の代理業務に関しては、後述する弁護士法72条にいう法的紛争の「法律事件」における代理は行政書士業務たりえないとの限界を十分に意識して解釈しなければならない。

    たとえば交通事故示談にあって、加害者側が事故責任を頑なに否認しているのに対して、代理人として責任追及的に交渉し賠償金を一方的に請求することは、裁判所での民事紛争「調停」(民事調停法2条、33条の2)の代理と同質的なので弁護士業務に属しよう。

    それに対し事故責任を結局自認する加害者と過失割合や賠償金額等の“話合い・協議”を被害者から受任した範囲で代理し、合意の示談書をまとめて自賠責保険支払い請求につなげることは、行政書士の合法的な契約締結代理業務に当ろう。

    また、遺産分割協議においても、相続人間に調停・訴訟の因をなす紛争状態があれば行政書士は代理介入できないが、助言説得をふくめて相続人間の合意形成をリードし、分割協議をまとめる代理行為は合法であって(同旨、東京地判平5・4・22判例タイムズ829号227頁)、そうした場合、両当事者や複数当事者の代理を務めて契約書・協議書を作成することも民法108条の双方代理禁止に触れないものとも解されよう。

    なお、内容証明郵便の代理送付の可否は、文書内容による。
  • ■ 次のとおりです。

    行政書士改正を受けて急きょ「論点特集」として平成13年7月号から10月号にかけて「行政書士とうきょう」に掲載された記事である。
    (筆者の個人的見解ではなく広報部として掲載している)

    「行政書士とうきょう」平成13年7月号
    論点特集
    改正行政書士法の解説とこれからの行政書士業務(1)
    戸口 勤

    はじめに
    先ず、初めに日政連、日行連及び東京会並びに賛成して頂いた各単位会の執行部の皆様に心から感謝の意を表したい。
    規制緩和の嵐の中でこれだけの改正を良く達成させたと思う。
    21世紀元年は、「行政書士制度の再構築元年」と呼べるのではないだろうか。

    改正法成立と今後について
    代理権を獲得するために具体的な活動があったのは昭和55年の法改正の時であったと記憶している。
    その当時の法改正で、「提出手続き代理権」を獲得できず「提出手続き代行権」と「書類作成相談業務」が追加された。
    爾来、幾たびか代理権獲得のための活動を続けてきたが、特に資格制度にはなんら関係の無いはずの自動車関係団体の反対があった事は会員諸氏の知るところである。

    今回は、昨年の弁理士法改正にあたっての関係省庁、自民党関係部会、関係団体と行政書士会との合意確認事項を受けての改正であった。
    弁理士法改正から2年以内に行政書士法を改正するとの当該合意があったのでタイムリミットが迫っての改正であり、司法制度改革と規制緩和の流れの中で20年来の悲願であった代理権の獲得が劇的に達成されたのである。
    この「代理権」獲得の法改正が達成された事の意味するところは、行政書士のみならず利便性を求める国民の勝利だと思う。
    業界団体のエゴは通用しない時代が到来した証でもあるからである。

    今後は、行政書士法の解釈を国民に周知し、国民の為の行政書士制度として整備を図らねばならない。
    現執行部及び会員の熱意で得た代理権を実務の上から行使して行く事は、私たち会員の務めと思う。

    法律の効果
    「行政書士法の一部を改正する法律案」は原案通りの成立につき、改正条文は、「行政書士とうきょう」5月号56ページを参照されたい。

    第1条(目的)の改正は、「寄与し」の下に「、あわせて」を加えるだけの事のように思えるが、これは非常に重要な改正なのである。
    それは後述の第1条の3第2号の「契約代理業務」(民間人と民間人との契約を代理するので略して、「民民代理」と言われる。)の規定を創設することを受けての改正である。

    旧法の規定では「・・行政の円滑な実施に寄与・・(することに困って)・・国民の利便に資する・・」のであったが、「民民代理」は「行政の円滑実施に寄与」する事と「国民の利便に資する」事の2つの柱にする必要があり、そのための改正と解することができる。

    次に、第1条の3の改正であるが、大幅に改正され代理権が法文に明記された。
    今回の改正の目的について、衆議院法制局では、行政書士制度の明確化・・と説明しているが、その意味するところは、代理権の創設である。
    第1号が、「提出手続き代行」から「提出手続き代理」に改正された事で、日々の実際の業務の中にあって、許認可申請手続きが変わる訳ではない。

    しかし、代理の語句が法文中に入った事で代行業者から代理する法律家に成った事は大きな改正と言わざるを得ない。
    特に第2号の代理人の意味は大きい。
    契約締結代理業務はここに規定された。
    第2号の文言中、契約書等を代理して作成するのではなく、代理人として作成すると規定した。
    この「人」の1字の重みを理解しなければならない。
    詳しくは次回に譲る事にする。

    「行政書士とうきょう」平成13年8月号
    論点特集
    改正行政書士法の解説とこれからの行政書士業務(2)
    戸口 勤

    なぜ代理なのか=(第1条の3第1号の代理)
    ここで、代理と代行の意味を再確認したい。
    本号の代理は、民民代理の本条第2号との代理とは少し概念を異にし、純然たる公法上の代理(行政機関から行政機関に対する委任等による代理)とも概念を異にし別に論じなければならない。
    本号の代理は、行政庁に対して申請人が何かの利益、効果等を求める為の代理である。
    ここに意思表示の合致は見られないが、法行為である事に変わりが無い。
    しかし、私法である民法上の代理理論をそのまま公法上の代理制度に適用する事はできないのは勿論だが、法行為を本人に代わって行う観点においては類似性が見られる。

    本号の代理は、行政手続上の代理であるので準公法上の代理とも考えられるが、申請人である本人の申請意思に基づき行政書士が代理人として「提出手続代理」行為を行なう点で民法上の代理の法理論を一部的に類推適用でき得ると解釈する。

    従って、代理とは、代理人の法行為によって、本人が直接にその法律効果を取得する事であるとここでは一応に定義する。
    それに対して、代行とは、事実行為を本人に代わって行なう事であり、代行者(使者)は、本人に代わって法行為や意思表示を行なうことができない。

    最応に広く表現をすれば、代理と代行は、法行為(以下法律行為を含む)を本人に代わって行なうか、事実行為を本人に代わって行なうかの相違である。

    法行為を本人に代わって行なう事を業をする者を法律家と言う。
    従って、改正前の行政書士法には、代理の規定が無いので、厳密に言えば行政書士は法律家とは言えなかった事になる。
    行政書士は、改正行政書士法が成立し明年7月1日の施行によって、初めて法律家として、国家から認知を受けたと言えるのである。

    本号の代理は、「意思代理ではなく事実行為の代理である」との説もあるが、「事実行為の代理」と言う概念は法解釈上で疑問が残る。
    代理と代行の概念的区別が不明確になるからである。

    提出手続代理行為は「事実行為」ではなく申請に関する意思表示の一種(受理、許可等の効果を求める一方行為)と解するのが相当であろう。
    いずれ総務省の解説があるのでそれを待ちたい。

    実務上から見た代理
    では、「提出手続代理」と「手続代理」との相違はどうであろうか。
    「・・提出・・」と限定している前者の方が後者より狭い概念と言えるが、日々の業務においてはまったく同一と解しても間違いではない。

    この1号の代理業務のみでは、字句の訂正、補正は行ない得るが、提出書類の内容変更まではする事が出来ない。
    ただし、第1条の2の書類作成業務について、依頼者から「一式包括作成委任」を受任すれば提出書類の内容変更までをすることが出来ると解することが出来る。

    従って、書類作成業務と提出手続代理業務とを同時に委任を受け依頼されるのが通常なので、その二つの業務を受任する事によって、「提出手続代理」が結果的には「手続代理」と同一の業務になりまったく差異が無くなる。

    改正行政書士法も、この事を前提とし「・・提出する手続きを代理する」と規定したと解する事が出来る。
    法案作成にあたっての日行連、日政連の未来を見据えた努力がうかがえる。

    「提出手続代理業務」には罰則規定がないので誰でも提出するだけであるのなら行なうことができる。
    但し、報酬を得て書類作成を行えば行政書士法違反である。
    「提出代理業務」を報酬を得て、「書類作成業務」を無報酬で行ったらどうであろうか。
    脱法行為として、当然行政書士法違反になる。
    次回は、弁護士法との関係、民民代理について論及したい。

    「行政書士とうきょう」平成13年9月号
    論点特集
    改正行政書士法の解説とこれからの行政書士業務(3)
    戸口 勤

    第一条の三第2号の代理
    第2号の代理は、第1号の代理とは少し概念を異にする私法上の代理であり、第2号の代理は、当事者間における「意思の合致」を得る為の代理が中心である。

    第2号は、「書類を代理して作成する」と言う概念はあり得ないので、「代理して作成する」ではなく「・・代理人として作成する・・」と規定され、「人」の一文字が入ったことは画期的改正であり重要な意味が存在する。
    第2号の代理は「契約締結代理業務」が前提として存在し、その代理人として契約書を作成する意味であると解する事ができるからである。

    「契約締結代理」「契約相談」が新たな行政書士業務となったのである。
    今でも、「同じ業務を取り扱っている」と主張する行政書士もいる。
    しかし、法文に規定され行政書士の法定業務とされた事は評価すべきである。
    取り扱っても違法でない事と業務は、行政書士賠償責任保険の担保範囲にもなりうる。

    改正反対の根拠はなにか
    行政書士法改正反対者の考え方は、第1号とこの第2号代理を独占業務にすべきであると主張した。
    しかし、弁護士法第72条は「争訟性の有る法律事務」に限定すべきであると主張し、「契約締結代理業務」は「争訟性の無い法律事務」で弁護士の独占業務では無いとして第2号の行政書士業務に取り込んだ。
    それを行政書士の独占業務にする理由づけには矛盾がある。

    且つ、司法制度改革の中で、関係省庁、最高裁等の立会いの下に「弁護士の独占業務は『争訟性の有る法律業務』に限られる」と確認された事も行政書士にとっての大きな勝利である。
    代理業務を行政書士の独占業務とする事は、規制緩和の趨勢の中、時代に逆行する団体エゴでしかない。
    行政書士の独占業務は、第1条の2の「書類作成業務」で充分に余りある。

    争訟性の有る法律事務(弁護士との業務)
    次に示談書と示談交渉についてであるが、示談書の作成は、一見「争訟性の有る法律事務」に思いがちである。
    しかし、示談書は、紛争の結果締結をするものであり、新たな紛争を生じさせない、紛争が再発しない様にする為の合意書である。
    そこには紛争の終焉が有り、示談書は「争訟性の無い法律事務」と解する事ができる。
    従って、示談書の作成を「民民」の業務範囲をして大いに取り扱うべきである。
    示談交渉は、「争訟性の有る法律事務」であり報酬を得る目的で行う事は弁護士の独占業務であろうが、国民の利便性を考えた場合、簡易裁判所の事物管轄と同額(少額)の示談交渉は行政書士が取り扱うべきであり、今後の課題として検討の要するところである。

    下級審の判決では少額の示談交渉は非弁活動に当たらないとするものもあるが高等裁判所で取り消されている。(非弁活動=弁護士法72条違反のことを言います)

    紛争の内在する内容証明郵便を代理人として発すれば非弁活動になる。
    非弁活動の法律行為は無効であり、本人の追認が有っても有効にはならないので注意を要する。
    しかし、争訟性のある法律事務(内容証明等)であっても、書類作成として取り扱えば正当な行政書士業務と解する。

    まとめ
    私法上の代理が法文に規定された士業は、行政書士、弁護士、弁理士の3資格のみであって税理士、司法書士、社会保険労務士の士業法にはその規定が無い。
    そのすばらしさを知る時、法律家としての認識と責任の重さを感ぜざるを得ない。
    同時に、会員一人一人が研鑽を積み、常に国民の利便性並びに公益的責務を意識し、そのニーズに応えなければならない使命を日々痛感する。

    「行政書士とうきょう」平成13年10月号
    論点特集
    改正行政書士法の解説とこれからの行政書士業務(4)
    戸口 勤

    追補として、これからの行政書士の業務と責務について論及する。

    具体的な提出手続代理業務を進展させる為に
    提出手続代理権の獲得によって、行政庁の対応がどのように変わって行くであろうか。
    今回の改正の目的は「行政書士業務の明確化」にある。
    その事を踏まえると、殆ど行政手続そのものは変わりが無く従来通りのようにも思えるが、「代行」から「代理」へ文言が改正され、まったく同じ取り扱いと言いう事は法的にあり得ない。
    法律は、解釈に依ってかなり適用、運用が変わるため各行政庁の適正な改正行政書士法の解釈を期待する。
    具体的な手続きに於いては、誤字、脱字等の軽微な訂正は行政書士の職印で可とされなければならない。
    また、許可書等の受領する事が出来ると解する。
    然じて、許可書の交付が郵送制度による場合は、行政書士も受領し得ない。
    何故ならば、本人に受領権限が無い行為を行政書士に委任する事が出来ないからである。

    何れにしても、行政書士ひとり一人の意識を行政庁に対する対応が行政庁を動かし、結果的に、国民の為の理想の提出手続制度へと確立されて行くのである。

    急がれる行政書士事務所法人化への法改正
    おりしも、先般の通常国会で弁護士、弁理士、税理士事務所の法人化の法案が成立した。
    司法書士、社会保険労務士、不動産鑑定士の各士業会も事務所法人化の法改正に向けて準備が進められている。
    代理権の獲得が、士業界で最後に成ってしまった事を教訓として、行政書士事務所法人化の為の法改正を急がねばならない。

    士業事務所法人化の要請は、①事務所経営の規模拡大による安定化、近代化と②多数の行政書士による継続性、透明性のある事務所経営、事件処理並びに③法律、税務、行政手続等の複雑専門化等に対応する為であり、④国民ニーズの多様化に対応し、引いては国民の利便性こそがその目的である。
    国際化、多様化の中で弁護士も、民事、刑事、家事の専門分野だけでは到底対応できなくなり、その事件の専門性を必要とされる様になった。
    税理士も同じく税制度の専門化、高度化により一人の税理士のみでは対応が難しくなってきた。
    他の士業も法人化の要請理由とそのニーズは同じであるが、行政書士こそが、業務の専門性が求められ、守備範囲の広さでは士業の中で群をぬく。

    行政書士制度は、「行政の専門家である行政官」と「『素人である国民』の代理人である専門家行政書士」とが対等に行政手続を進める事によって、行政手続の円滑と適正な運用を国民に対して保障している。
    すなわち、行政書士制度は、国家の国民に対する「申請権の保障」の制度であると考えられている。
    従って、国民に「申請権を保障」する為には、行政書士は、業務の専門性、継続性そして業務の透明性までも強く要求されるのであろし、それらを強く求められれば事務所の法人化は当然の帰結となる。
    その観点からも、行政書士は、事務所法人化の法改正を急がなければならない。

    ADR=裁判外紛争処理制度への責務
    現在の裁判外紛争処理制度は、直接に紛争処理を目的とした「建設紛争審査会」「交通事故紛争処理センター」があり、弁護士会、弁理士会の共同で設立した「工業所有権仲裁センター」等がある。
    それを利用するためには、数ヶ月前から予約が必要で、急を要する解決には利用できない。
    その他に、消費者相談事業活動の一環として、紛争処理を取り扱う「国民生活センター」「消費者センター」等がある。
    弁護士会や司法書士会はボランティアで相談事業を取り扱っているが、当事者双方が合意しなければ法的効果が無い点で積極的な解決制度とは言えない。
    司法制度改革審議会において、ADRに隣接法律専門職(士業)をどの様に活用するかが課題を成っている。
    行政書士は、今回の法改正で「契約締結代理」「契約交渉代理」等の業務が法定業務とされた。
    それにより、行政書士は当然に法律家に名実共に成ったのであるから、ADRに積極的に活用されなければならない。
    その形態は、業務としてでもボランティアとしてでも良いと考える。
    国民の利用しやすい多様な解決手段としてのADRの実現に、行政書士は進んで協力する責務がある。

    会計調査人制度への行政書士の役割
    法務省で現在「会計調査人」制度を検討中である。
    行政書士が会計業務を取り扱う事は広く知られていない。
    財務諸表は、主に貸借対照表と損益計算書とに別れるが、貸借対照表は、財政状態と言う事実を証する書面であり、損益計算書は、経営成績と言う事実を証する書面である。
    従って、財務諸表は、事実証明に関する書類であり、その作成は行政書士の主たる業務である。

    行政書士の会計業務は、公認会計士や税理士における会計業務とは本質を異にしている。
    公認会計士と税理士の両資格の会計業務の中には、財務諸表の作成は包含されている。
    行政書士の会計業務は、財務諸表を作成する為の手段としての会計業務であり、財務諸表に重点が置かれている事に特徴を見ることができる。
    それは、事実証明を内在していると考える事ができる。
    会計調査人制度のこれからの実務上の問題として、公認会計士や税理士が作成した財務諸表を自らが会計調査する事には疑問が残る。
    行政書士こそが、第三者として事実証明の専門家として会計調査を担当すべきと考えるが如何であろう。
    会計調査とは、会計事実又は真実を証明する事に他ならないのではないだろうか。

    許認可申請は、財務諸表の添付を求められる事が多い。
    財務諸表の分析が出来なくては行政書士は務まらない。
    それだけ、行政書士業務は財務諸表と切っても切れない関係にある。
    行政書士が、会計の専門家として社会的に認知されない事は、行政書士自身の自覚と啓蒙が不足しているからだと思うのである。
    毎日の様に、法に基づく財務諸表の組み替えをしているのが現実の行政書士の姿である。
    自身を持って会計の専門家を自負しなければならない。
    行政書士が中心に成って設立した会計学会が全国に2つある。
    それらの学会は、東京と福岡にそれぞれ事務所を置く。

    ワン・ストップ・サービス実現への行政書士の社会的責務
    「ワン・ストップ・サービス」の語源は流通業界の「ワン・ストップ・ショッピング」にある。
    百貨店、スーパー等の量販店は、早くから「ワン・ストップ・ショッピング」を指向し、消費者のニーズに対応すべく品そろえを充実され続々と出店させた。
    そこには、消費者の利便性を常に考えてきた流通業界の姿勢が見られた。
    しかし、これまで士業界は、業界を厳しく解釈し、職域の確保を優先させ、国民の利便性は二の次であった。

    ここに来て、司法制度改革審議会の中で、「ワン・ストップ・サービス」が呼ばれ、「経済法律総合事務所」制度が提案されている。
    しかし、当該事務所を数多く作らなければ意味がない。
    事務所内に資格士業者を一同に会する制度を創設しても「ワン・ストップ・サービス」は現実のものとはならない。
    独立を志向した資格士業者の多くが総合事務所に参加するとは考えにくく「ワン・ストップ・サービス」は、まれな事務所となってしまう可能性があるからである。

    そこで、「ワン・ストップ・サービス」を現実のものとする為には、現行制度をできるだけ堅持しつつ、前掲の①事務所の法人化はもとより、②他の士業事務所での当該資格士業者の事務処理を認める事と③士業者間におけるネットワークを組み、紹介精度を確立する事が必要であろう。

    行政書士は、弁護士以外の資格士業のルーツでもあるのであるから、「ワン・ストップ・サービス」の窓口としての役割に適任であり、責務でもあろう。
    他に資格士業制度は、主に税務署、登記所、特許庁等に限定される事が行政書士制度との大きな相違点である。行政書士は他の士業者の取り扱わない全ての行政庁を対象とした行政手続についての業務をなす事が出来る事が、「ワン・ストップ・サービス」の窓口担当士業者に適任の所以である。
    資格士業者同士で、業務の問題を考えている時ではない。
    専門は専門として認め合い、各士業者がネットワークを組み、いかに国民のニーズに対応して行けるかに、それぞれの制度の存亡が掛かっている。
  • ■ 次のとおりです。

    司法制度改革審議会 第46回会議議事概要

    1 日時 平成13年2月2日(金) 13:30~17:00
    2 場所 司法制度改革審議会審議室
    3 出席者

    (委員、敬称略)
    佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、北村敬子、髙木 剛、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子

    (事務局)
    樋渡利秋事務局長

    4 議題
    「弁護士の在り方」について
    -意見交換及びこれまでの意見交換の結果の整理(口頭)-

    5 会議経過
    (1) 議事に先立って、第44回会議において配付された日本弁護士連合会の意見書「弁護士のあり方について」(2001年1月23日付け)の「綱紀・懲戒手続をより透明化するための課題と方策」について、その趣旨をより明確化するため同連合会から提出を受けた「『弁護士のあり方について』(補充書)」(2001年2月1日付け)と題する文書が配付された。(別紙参照)

    (2) 弁護士倫理の強化と弁護士自治について、次のような意見交換が行われた。
    ○ 前々回の会議におけるヒアリングを通じて、日弁連が綱紀・懲戒制度の改革に前向きの姿勢であることは分かったが、さらに、改革のタイムスケジュールを策定する考えはあるのか、懲戒案件等の標準処理期間を定めるのか否か、綱紀・懲戒委員会の委員の人数をどの程度増やし、開催頻度をどの程度増やすこととするのかなどの点について、日弁連の考え方をお聴きしたい。

    ○ 綱紀・懲戒手続の迅速化のための抜本的な対策として、綱紀委員会及び懲戒委員会を弁護士会ごとにそれぞれ複数設けることとすべきである。

    ○ これまでの意見交換を踏まえ、次のような点については、大方の認識が一致したのではないか。

    ア.綱紀・懲戒手続の強化と同時に、依頼者等の利益保護の見地から、弁護士会の苦情処理を適正化。
    たとえば、苦情相談窓口の整備と一般への周知、苦情相談担当者の育成、苦情処理手続の適正・透明化、綱紀・懲戒手続等との連携強化。
    このほか、弁護過誤訴訟の容易化、弁護士賠償責任保険の普及。

    イ.弁護士会運営の透明化。たとえば、会務運営へ弁護士以外の者の関与の拡大。
    業務、財務等の情報公開の仕組みを整備。

    ウ.法曹養成段階での倫理教育、継続教育段階での倫理研修の強化。

    (3) 弁護士費用(報酬)の透明化・合理化について、次のような意見交換が行われた。
    ○ 現在の報酬規定は、一般人が見て、弁護士を依頼するとどの程度の費用がかかるのか、容易に見当が付くものとなっていない点に問題がある。
    例えば、交通事故の損害賠償請求なら幾ら、離婚の調停なら幾らというように、弁護士を依頼したことがない人でも一目見てすぐ分かるものにする必要がある。

    ○ 弁護士法が、単位弁護士会の会則において報酬規定を定めることとしているが、そもそも法律上そのように定める必要があるのか否かについて見直すことを含め、報酬規定を、より分かりやすい、実質的なガイドラインと言えるようなものとし、国民がそれを目安として安心して弁護士を依頼できるようにする必要がある。

    ○ 弁護士自治の考え方から出発して、単位弁護士会がその会則で自ら報酬の標準を定めることとし、その趣旨を法律上も明らかにしたという点で、この弁護士法の規定にも意味がある。

    ○ これまでの意見交換を踏まえ、次のような点については、大方の認識が一致したのではないか。

    ア.弁護士報酬について、利用者にとって目安がつきやすい制度とする見地から、透明化・合理化を図る。
    たとえば、個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化、報酬契約書の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底。

    イ.報酬に関し弁護士会が規定を策定する場合には、その策定過程を透明化。

    ウ.なお、弁護士会が報酬規定で目安となる標準額を定めること、弁護士法において「弁護士の報酬に関する標準を示す規定」が必要的会則事項とされていることについては、競争政策上の問題が指摘されていることを認識。

    (4) 隣接法律専門職種の活用、弁護士法第72条の見直しなどについて、次のような意見交換が行われた。
    ○ 弁護士過疎地域におけるその業務の実態などにかんがみ、国民に利用しやすい司法を実現する観点から、司法書士について、試験・研修などの担保措置を講じた上で、簡易裁判所における民事訴訟、調停及び和解の代理権を始め、家事審判、民事執行などの代理権を付与することとすべきではないか。

    ○ 事案が少額かつ単純であり、民事訴訟法上も裁判所の許可により弁護士でない者が代理人となり得ることとされている簡易裁判所における民事訴訟に限って、試験・研修等の能力担保を前提として、司法書士に代理権を認めることとすべきではないか。

    ○ 明治期以来の行政が司法を抑制する一環として、行政庁の監督下に置かれるものとして隣接法律専門職種が設けられてきたという経緯を無視して、ただ便利になるというだけの理由でそれらの職種に訴訟代理権を付与することを議論することは、当審議会が、そのような歴史的な経緯をも踏まえ、質・量ともに豊かな法曹を目指して法曹養成制度の在り方の見直しから議論を始め、その後の審議を積み重ねてきたことを考え併せると、当審議会の存在意義そのものを失わせかねない問題であると考える。
    このことは、何も弁護士の利益の保護ということではなく、国民の視点に立って、トラブルに巻き込まれ「藁をもすがる」思いとなっている訴訟等の当事者は、ともすれば非弁行為などの悪質な行為に釣り込まれやすく、悲惨な結果を招くこととなる場合が多いので、そのような行為の端緒を広げることにつながりかねない訴訟代理権の付与を安易に議論してよいのかという観点から言っている。

    ○ 隣接法律専門職種が生まれてきた歴史的な経緯は確かにあるが、当審議会に求められている国民に利用しやすい司法の実現という考え方に立てば、弁護士のアクセスの拡充が問題となっている。弁護士がいない地域の人々は困っており、実際に司法書士がこうした人々のニーズに応えているのであり、そのような実態はこれまでにも当審議会の調査審議において明らかにされてきた。
    何も突然に、隣接法律専門職種への代理権の付与が議論され出したのではない。
    また、弁護士は、その業務を奪われる訳ではなく、一定の事件に限って訴訟代理権を認められた司法書士と競争すればよいのであり、それこそが国民に利用しやすい司法の実現につながることだと思う。

    ○ 確かに、隣接法律専門職種の将来像をあまり掘り下げて議論していないかもしれないが、とはいえ弁護士過疎地のニーズに応える問題もあり、現実指向でそれらの職種への代理権付与の議論となっている。
    国民にとって「利用しやすい」とはどういうことかを今一度考えてみると、それには、安価、容易なアクセスなどの「使い易さ」の面と、機能が十分であるという「信頼性」の面があり、この両面からの検証が必要ではないか。

    ○ 弁護士過疎地域に司法書士がいて、国民にとって便利だからという理由だけで訴訟代理権を付与するという議論はおかしい。
    また、法曹人口が増大するまでの過渡的な措置として付与するというのも誤った議論であり、将来質・量ともに豊かな法曹が実現した後に、お互いに競争し合い淘汰されることによって、落ち着くべきところに落ち着くこととなればよいのではないか。

    ○ 隣接法律専門職種については、歴史的な背景や基本的な考え方など、難しい問題をはらんでいることを認識する必要があり、この課題について「便宜」という観点からのみ捉えて改革案を検討するべきではないこと。
    こうした問題については、濃淡の差はあれ各委員が十分に考えてきたことであり、中間報告の表現振りにはそのような思考過程が反映されていること。
    隣接法律専門職種に訴訟代理権などを付与することとする場合においては、試験・研修など信頼性の高い能力担保のための措置をどうするか、具体的な事件の範囲をどうするか等検討すべき課題が多く、本日の段階で確定的な結論を出せるものではないこと。
    などを共通の理解として認識した上で、次のような点については、大方の認識が一致したのではないか。

    ア.隣接法律専門職種については、その有する専門性を活用する見地から、
    (a)司法書士への簡裁での訴訟代理権の付与を前向きに検討し、その前提として、試験・研修など信頼性の高い能力担保措置を検討。
    なお、簡裁事件の具体的範囲等については検討の余地あり。

    (b)弁理士への特許等の侵害訴訟代理権(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る)の付与を前向きに検討し、その前提として、試験・研修など信頼性の高い能力担保措置を検討。

    (c)弁護士が訴訟代理人となっている事件について、税理士が税務訴訟で裁判所の許可なく補佐人となりうる、出廷陳述権を付与することを前向きに検討。

    (d)行政書士及び社会保険労務士など、その他の隣接法律専門職種についても、その専門性を訴訟の場で活用する必要性や相応の実績等が明らかになった将来において、出廷陳述など一定の範囲・態様の訴訟手続への関与の在り方を個別的に検討することも、今後の課題としては考えられる。

    (e)隣接法律専門職種のADRを含む訴訟手続外の法律事務への関与については、弁護士法第72条の見直しの一環として、職種毎に実態を踏まえて判断。その際、当該法律事務の性質と実情、各職種の業務内容・専門性やその実情、その固有の職務と法律事務との関連性、法律事務に専門性を活用する必要性等を踏まえ、その在り方を個別的に検討すべき。

    イ.企業法務等が行う法律事務の位置付けについては、更に検討が必要だが、少なくとも、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備を前向きに検討。

    ウ.特任検事、副検事、簡裁判事の経験者の有する専門性の活用を前向きに検討。
    たとえば、少なくとも、特任検事へ法曹資格の付与を行うための制度整備を前向きに検討。

    エ.ワンストップ・サービス(総合法律経済事務所)実現のため、弁護士と隣接法律専門職種その他の専門資格者による協働を積極的に推進。
    このような見地から、収支共同型や相互雇用型等の形態などいわゆる異業種間共同事業については、国際的会計事務所との関係の在り方にも留意しつつ、更に検討が必要。

    オ.日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進。
    このような見地から、たとえば特定共同事業の要件緩和等を前向きに検討。
    なお、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用禁止等の規制緩和は、国際的議論もにらみつつ、広い視点から、なお慎重な検討が必要。
    また、法曹養成段階における国際化の要請への配慮、発展途上国に対する法整備支援を推進。

    (5)次回は、2月13日(火)午後1時30分から開催し、「裁判官制度の改革」について審議することとされた。

    以上
  • ■ 次のとおりです。

    弁護士法第72条についての司法制度改革審議会での主なやりとり

    資料24-2②
    (資料9-2)

    第28回審議会(12.8.29)
    〇山本委員 それは私どもも、是非入れてもらいたいと思っているんです。
    要するに、弁護士さんの法律事務の独占という概念について、私ら議論する必要があるだろうとお願いしたいと思っているのですが、要するに、法廷代理、これは弁護士独占であるべきだし、よくよくのことがなければ、隣接職種の問題がありますが、限定的な解除しかないと思うんです。
    これに対していわゆる法律事務ですね、これについては、隣接職種も含めてフリーでいいのではないかという考えを持っているんです。

    第60回審議会(13.5.22)
    ○竹下会長代理 これを議論しましたときに、山本委員が指摘しておられる問題は、弁護士法72条の方の問題なのではないか。
    つまり、法曹資格を認めるという問題ではなくて、親会社の法務部が子会社の法律事務を処理することが弁護士法上許されるという問題ですね。

    ○山本委員 そうです。典型的な非弁活動とは違うんじゃないですかということです。

    第61回審議会(13.5.29)
    ○竹下会長代理 これは随分前から山本委員が言っておられることで、例えば、親子会社のような場合で、親会社の法務部が子会社の法律事務や何かを処理することが、弁護士法72条に違反すると言われるのはおかしいのではないかということです。
    ここで書いてあるのは34ページも、82ページも、むしろ弁護士法72条の規律内容をはっきりさせてくださいということなのです。
    どうしてはっきりしないのかというと、今のような企業法務の例で、常識的に考えると、当然ではないかと思うようなものまで形式上は72条に違反するということになりそうなのです。
    それから、隣接法律専門職種との関係でもそうです。
    一方では弁護士法では、弁護士法に別段の定めがある場合でなければ、報酬を得る目的で他人の法律事務を扱うことを業とすることは許されないと言っているのに、他の法律で別段の定めをしてあると、それはよいということになっているのは、やはり国民の目から見ると非常に分かりにくい。そういう意味で、72条の内容を見直してくださいというのがここの趣旨なのです。
  • ■ 次のとおりです。

    【法務省】

    ●法曹制度検討会(第24回)議事録(司法制度改革推進本部事務局)

    1 日時:平成15年12月8日(月) 10:30~12:00
    2 場所:司法制度改革推進本部事務局 第1会議室
    3 出席者:黒川弘務(法務省大臣官房司法法制部司法法制課長)、他省略

    ○報酬性
    報酬を得る目的という要素について御説明しますと、法第72条本文は「報酬を得る目的」で行う行為を規制しております。
    この報酬は、現金に限らず物品や供応を受けることも含まれ、額の多い、少ないは問わず、第三者から受け取る場合も含まれると解されております。
    他方で、無償で受託する場合は報酬を得る目的があるとは言えません。

    また、実質的に無償委任と言える場合であれば、特別に要した「実費」、実費部分を受領しても報酬とは言えないと思われます。
    この「実費」の範囲だと思われますが、当該委任事務を行うために特別に費やされた、例えばコピー代等のようなものはこの「実費」に含まれる可能性がございます。
    他方、人件費のように、当該事務を行うために特別に費やされたとまでは言えないものは、全体として報酬と評価されることが多いのではないかと考えております。

    ○事件性
    「法律事件」という要素についてでございますが、この法律事件といいますのは、法第72条本文に、「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して」と書かれております。
    このうち「その他一般の法律事件」が何を指すかについては、一般に法律上の権利義務に関して争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件とされておりますけれども、この点について、いわゆる「事件性不要説」と「事件性必要説」という考え方がございます。

    「事件性必要説」というものは何かと申しますと、例えば列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義を有するものであること、言い換えれば、事件というにふさわしい程度に争いが成熟したものであることを要するとしております。
    つまり紛争性がある程度成熟して顕在化しているものであれば、法第72条の規制の対象になるけれども、そうでない場合には、つまり事件性がない場合には法第72条の規制の対象にはならない、というのが「事件性必要説」です。

    法務省としては、事件性不要説は相当ではないと考えておりまして、事件性必要説が妥当だと考えております。
    その理由はいろいろございますけれども、事件性不要説では、処罰範囲が著しく拡大してしまいますし、本来、弁護士法第72条が想定している射程の範囲を超えるような事柄についてまで処罰の対象としてとらえてしまうことになるからという点が一番大きい理由になっています。

    事件性不要説の場合、新たな権利義務関係が発生すれば、すべて「その他一般の法律事件」に該当することになりますので、例えば一般の業者が仲介業を行う賃貸住宅の賃貸借契約や不動産の売買契約の締結作用等もすべて法律事件に該当することになってしまって相当ではないと考えています。
    法第72条が弁護士の職務を定めた法3条1項に比べて、限定的な文言を用いていることからも分かるように、弁護士法は刑罰をもって、弁護士以外の者が弁護士の業務一般について行った場合を処罰するのではなく、事件性がある法律事務を行った場合に処罰する趣旨であることを定めたものと考えるのが適当であろうと思われます。

    以上の理由から、法務省としては、いわゆる「事件性必要説」に立っているわけですけれども、その場合、争いや疑義としてどの程度のものが必要かが次に問題となろうかと思います。
    この点、ここに争いや疑義が抽象的又は潜在的なものでもよいと考えてしまいますと、事件性不要説と同じ結論になってしまいますので、争いや疑義は具体化又は顕在化したものであることが必要と考えます。
  • ■ 次のとおりです。

    【法務省】

    ●第162回国会 衆議院 厚生労働委員会 第26号 平成17年6月8日 午前9時32分開議

    政府参考人 倉吉敬(法務省大臣官房司法法制部長)、他省略

    ○弁護士法の優位
    「弁護士法も、それから社会保険労務士法等の隣接法律専門職種の業法も、いずれも法律でございます。
    上位規範、下位規範の関係にございません。
    ただ、法律専門事務の取り扱いにつきまして弁護士法七十二条が一般的に弁護士以外の者による取り扱いを禁じておりますので、他の法律専門職の業法に弁護士法七十二条の特別法となる部分が出てくる、ただそれだけにすぎない、そういう関係でございます。
    弁護士法七十二条が「他の法律」と規定しておりますのは、このような一般法、特別法の関係が存するということを確認的に示したものでございまして、弁護士法が今御指摘の他の法律よりも上位の規範であるということはございません。」

    ○報酬性
    七十二条の要件を説明しろという御趣旨だと思います。
    まず、七十二条には、報酬を得る目的と、それから業としてという要件を掲げております。
    したがいまして、無償で行う場合はまず七十二条違反にはならない。

    ○業務性
    それから、反復継続して行う事実とか、反復継続して行うという意思がない場合には業としてということになりませんので、これも当たらないということになります。

    ○事件性
    また、弁護士法七十二条が規制しておりますのは、法律事務の取り扱いすべてではありません。
    若干条文を援用いたしますが、「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して」となっておりまして、これについて法律事務を取り扱うこととされております。

    この「一般の法律事件」につきましては、いわゆる事件性があるということが必要と解されまして、事件性のない法律事務を取り扱うことは同条に違反しないと解釈しております。
    なお、この事件性とは、文献によりますと例えばこのように書かれておりまして、今読み上げました列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義を有するものであること、言いかえれば、事件というにふさわしい程度に争いが成熟したものであるということとされております。
  • ■ 次のとおりです。

    【法務省】

    ●AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について

    令和5年8月1日 法務省大臣官房司法法制部

    弁護士法第72条で禁止される、いわゆる非弁行為に該当するか否かについては、それが罰則の構成要件を定めたものである以上、個別の事件における具体的な事実関係に基づき、同条の趣旨(最高裁判所昭和46年7月14日大法廷判決・刑集第25巻5号690頁)に照らして判断されるべき事柄であり、同条の解釈・適用は、最終的には裁判所の判断に委ねられるものである。

    そのため、飽くまで一般論とならざるを得ないが、AI等を用いて契約書等(契約書、覚書、約款その他名称を問わず、契約等の法律行為等の内容が記載された文書又はそれらの内容が記録された電磁的記録をいう。以下同じ。)の作成・審査・管理業務を一部自動化することにより支援するサービス(以下これらを総称して「本件サービス」という。)の提供と同条との関係についての考え方を以下に示した。

    本件サービスが、下記1から3までに記載した「報酬を得る目的」、「訴訟事件…その他一般の法律事件」又は「鑑定…その他の法律事務」の各要件のいずれかに該当しない場合には、本件サービスの提供は、弁護士法第72条に違反せず、本件サービスが下記1から3までの要件のいずれにも該当する場合であっても、下記4に該当する場合には、当該サービスの提供は、同条に違反しないと考えられる。

    なお、下記1から4までに示した各例は、当該事項に関して明確に判断し得る具体例を参考として示したものである。
    また、いわゆる生成AIを用いたサービスの提供と同条との関係についても、原則として同様の枠組みで判断されるべきものと考えられる。

    ○報酬性
    1 弁護士法第72条の「報酬を得る目的」にいう「報酬」とは、法律事件に関し、法律事務取扱のための役務に対して支払われる対価をいうとされるところ、「報酬」には、現金に限らず、物品や供応を受けることも含み、額の多少は問わず、第三者から受け取る場合も含むと考えられる。また、「報酬」と認められるためには、当該利益供与と本件サービスの提供との間に対価関係が認められる必要があると考えられる。

    その上で、

    (1) 例えば、事業者が、利用料等一切の利益供与を受けることなく本件サービスを提供する場合には、通常、「報酬を得る目的」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。

    (2) 他方で、一見すると「報酬」を得ることなく本件サービスを提供する外観を有する場合であっても、本件サービスを提供するに当たり、例えば、

    ア 当該事業者が提供する他の有償サービスを契約するよう誘導するとき

    イ 第三者が提供する有償サービスを利用するよう誘導するとともに、本件サービスの利用者が当該第三者が提供する有償サービスを利用した際に当該第三者から当該事業者に対して金銭等が支払われるとき

    ウ 顧問料・サブスクリプション利用料・会費等の名目を問わず金銭等を支払って利用資格を得たものに対してのみ本件サービスを提供するときなど、本件サービスの運営形態、本件サービスと他の有償サービスとの関係、利用者・事業者・当該有償サービスの提供者・金銭等の支払主体等の関係者相互間の関係、支払われる金銭等の性質や支払の目的等諸般の事情を考慮し、金銭支払等の利益供与と本件サービスの提供との間に実質的に対価関係が認められるときには、「報酬を得る目的」に該当し得ると考えられる。

    ○事件性
    2 弁護士法第72条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関し、一般に、「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうとされるところ、同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び…行政庁に対する不服申立事件」に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するものであるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられ、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。

    その上で、

    (1) 例えば、取引当事者間で紛争が生じた後に、当該紛争当事者間において、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合には、法律上の権利義務に争いがあり、あるいは疑義を有するものとして「事件性」が認められることから、このような場合の契約書等の作成について本件サービスを提供するときには、「その他一般の法律事件」に該当し得ると考えられる。

    (2) 他方で、例えば、親子会社やグループ会社間において従前から慣行として行われている物品や資金等のフローを明確にする場合や、継続的取引の基本となる契約を締結している会社間において特段の紛争なく当該基本契約に基づき従前同様の物品を調達する契約を締結する場合には、いわゆる「事件性」を認め難いことが通常と考えられ、その契約関係を明らかにするために契約書等を作成する場合に本件サービスを提供するときには、通常、「その他一般の法律事件」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。

    (3) もとより、上記(1)、(2)以外の場合であって、いわゆる企業法務において取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意しつつ、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して、「事件性」が判断されるべきものと考えられる。

    ○事務性
    3 弁護士法第72条の「鑑定…その他の法律事務」にいう「鑑定」とは、法律上の専門的知識に基づき法律的見解を述べることをいうとされ、「その他の法律事務」とは、法律上の効果を発生、変更等する事項の処理をいうとされるところ、これらの点については、本件サービスにおいて提供される具体的な機能や利用者に対する表示内容から判断されるべきものと考えられる。

    なお、以下では、本件サービスを、便宜上、「(1) 契約書等の作成業務を支援するサービス」、「(2) 契約書等の審査業務を支援するサービス」及び「(3) 契約書等の管理業務を支援するサービス」に分類して記載しているところ、事業者が提供するサービスと同条の「鑑定…その他の法律事務」との関係について検討する際には、当該サービスにおいて提供される機能や表示の内容により、下記(1)から(3)までの各項目を参照されたい。

    (1) 契約書等の作成業務を支援するサービスについて

    ア 例えば、同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、以下の機能・表示が認められる場合には、同サービスの提供は、「鑑定…その他の法律事務」に該当し得る。

    (ア) その利用者による非定型的な入力内容に応じ、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な契約書等が表示される場合

    (イ) その利用者が、あらかじめ設定された項目について定型的な内容を入力し又は選択肢から希望する項目を選択する場合であっても、極めて詳細な項目、選択肢が設定されることにより、実質的には利用者による非定型的な入力がされ、当該入力内容に応じ、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な契約書等が表示されるものと認められる場合

    イ 他方で、例えば、同システムにおいて、その利用者があらかじめ設定された項目について定型的な内容を入力し又は選択肢から希望する項目を選択することにより、その結果に従って、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した複数の契約書等のひな形から特定のひな形が選別されてそのまま表示されるか、複数のひな形の中から特定のひな形が選別された上で、利用者が入力した内容や選択した選択肢の内容が当該選別されたひな形に反映されることで、当該選別されたひな形の内容が変更されて表示されるにとどまる場合(上記ア(イ)の場合と認められるときを除く。)、同サービスの提供は、通常、「鑑定…その他の法律事務」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。

    (2) 契約書等の審査業務を支援するサービスについて

    ア 例えば、同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、以下の機能・表示が認められる場合には、同サービスの提供は、「鑑定…その他の法律事務」に該当し得る。

    (ア) 審査対象となる契約書等の記載内容について、個別の事案に応じた法的リスクの有無やその程度が表示される場合

    (イ) 当該契約書等の記載内容について、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な修正案が表示される場合

    イ 他方で、例えば、同システムにおいて、以下の機能・表示にとどまる場合、同サービスの提供は、通常、「鑑定…その他の法律事務」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。

    (ア) 審査対象となる契約書等の記載内容と、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した契約書等のひな形の記載内容との間で相違する部分がある場合に、当該相違部分が、その字句の意味内容と無関係に表示されるにとどまるとき

    (イ) 審査対象となる契約書等の記載内容と、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した契約書等のひな形の記載内容との間で、法的効果の類似性と無関係に、両者の言語的な意味内容の類似性のみに着目し、両者の記載内容に当該類似性が認められる場合に、当該類似部分が表示されるにとどまるとき

    (ウ) 審査対象となる契約書等にある記載内容について、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した契約書等のひな形の記載内容又はチェックリストの文言と一致する場合や、ひな形の記載内容又はチェックリストの文言との言語的な意味内容の類似性が認められる場合において、

    ・当該契約書等のひな形又はチェックリストにおいて一致又は類似する条項

    ・文言が個別の修正を行わずに表示されるにとどまるとき

    ・同システム上で当該ひな形又はチェックリストと紐付けられた一般的な契約書等の条項例又は一般的な解説や裁判例等が、審査対象となる契約書等の記載内容に応じた個別の修正を行わずに表示されるにとどまるとき

    ・同システム上で当該ひな形又はチェックリストと紐付けられた一般的な契約書等の条項例又は一般的な解説が、審査対象となる契約書等の記載内容の言語的な意味内容のみに着目して修正されて表示されるにとどまるとき

    (3) 契約書等の管理業務を支援するサービスについて

    ア 例えば、同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、管理対象となる契約書等の記載内容について、随時自動的に、個別の事案に応じた法的リスクの有無やその程度が表示される場合やそれを踏まえた個別の法的対応の必要性が表示される場合には、同サービスの提供は、「鑑定…その他の法律事務」に該当し得る。

    イ 他方で、例えば、同システムにおいて、以下の機能・表示にとどまる場合、同サービスの提供は、通常、「鑑定…その他の法律事務」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。

    (ア) 管理対象となる契約書等について、契約関係者、契約日、履行期日、契約更新日、自動更新の有無、契約金額その他の当該契約書等上の文言に応じて分類・表示されるにとどまる場合

    (イ) 管理対象となる契約書等について、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ登録した一定の時期や条件を満たした際に、当該事実とともに、同システムの利用者が契約書等に関してあらかじめ登録した留意事項等が表示されるにとどまる場合

    4 本件サービスが、上記1から3までの「報酬を得る目的」、「訴訟事件…その他一般の法律事件」及び「鑑定…その他の法律事務」の要件のいずれにも該当する場合であっても、例えば、利用者を以下のいずれかとして本件サービスを提供する場合には、通常、弁護士法第72条に違反しないと考えられる。

    (1) 本件サービスを弁護士又は弁護士法人に提供する場合であって、当該弁護士又は弁護士法人がその業務として法律事務を行うに当たり、当該弁護士又は当該弁護士法人の社員若しくは使用人である弁護士が、本件サービスを利用した結果も踏まえて審査対象となる契約書等を自ら精査し、必要に応じて自ら修正を行う方法で本件サービスを利用するとき

    (2) 本件サービスを弁護士又は弁護士法人以外のものに提供する場合であって、当該提供先が当事者となっている契約について本件サービスを利用するに当たり、当該提供先において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士が上記(1)と同等の方法で本件サービスを利用するとき

    以上
  • ■ 次のとおりです。

    【法務省】

    ●ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について

    令和8年8月21日 法務省大臣官房司法法制部

    第1 本ガイドラインの趣旨・考え方

    1 本ガイドラインは、ビジネス分野(注1)における生成AI等技術(以下「AI等」という。)を活用した法務業務支援サービス(以下適宜これらを総称して「AI等法務業務支援サービス」という。)(注2)の提供について、当省が令和5年8月に「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」と題して公表したガイドライン(以下「令和5年ガイドライン」という。)における弁護士法(昭和24年法律第205号)第72条の解釈及び判断枠組みを踏まえつつ、AI等の技術の進展や現在普及している、あるいは今後の展開が想定され得るサービスの需要動向や市場動向等に鑑み、同条との関係上、特にその分水嶺となり得る要件に関する解釈指針を補完するとともに、同条及びその趣旨に反しないようにするためのガバナンス上の留意・推奨事項を示すことにより、AI等法務業務支援サービス提供事業者(以下「サービス提供者」という。)がAI等法務業務支援サービスを提供するに当たって、同条に抵触するリスクを回避し、AI等を事業展開に安全に活用できるようにすることを目的とするものである。

    令和5年ガイドラインは、AI等法務業務支援サービスのうち、契約書等関連業務支援サービスを例にとり、同条との関係で問題となり得る要件ごとに、「報酬を得る目的」(同ガイドライン1頁から2頁参照)、「訴訟事件…その他一般の法律事件」(同2頁から3頁参照)、「鑑定…その他の法律事務」(同3頁から6頁参照)のほか、当該サービスの提供の相手方(利用者)が誰であるかという観点から、個別に判断上の考慮要素を整理するとともに、通常該当しないと考えられる例と該当し得ると考えられる例を明確化したものであった。

    しかしながら、その後のAI等の急速な進展・普及や特にビジネス分野におけるAI等活用の需要の増大等により、法務業務支援の分野においても、次々に新たな業務支援サービスが考案され、サービス提供者等から、令和5年ガイドラインの解釈をめぐって、ビジネス分野における事業者向けのAI等法務業務支援サービスの提供に関する解釈上の疑義に関する照会がなされるなど、更なる規制の緩和や解釈の明確化を望む声が高まっている。

    そこで、本ガイドラインにおいては、令和5年ガイドラインの解釈を前提としつつ、実務上、特に懸念が生じやすい、弁護士又は弁護士法人でないサービス提供者が、営利、すなわち「報酬を得る目的」で、弁護士又は弁護士法人でない企業その他の事業者であるサービス利用者(以下単に「サービス利用者」という。)に対して、鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務(以下適宜これらを総称して「鑑定…その他の法律事務」という。)を行い得る機能を有するAI等法務業務支援サービスを提供する場合(いわゆる汎用型AIのサービス提供者が、報酬を得る目的で、サービス利用者に対して、「鑑定…その他の法律事務」を行い得る機能を有するサービスを(業として)提供する場合を含む。)を念頭に置いて、とりわけ、どのようなときに
    サービス提供者が同条に違反して「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件」(以下適宜これらを総称して「訴訟事件…その他一般の法律事件」という。)に関して「鑑定…その他の法律事務」を業として取り扱ったと指摘され得るのかという点にしぼって、判断上の考慮要素に関する考え方を改めて整理・補完し、通常該当しないと考えられる例と該当し得ると考えられる例を示すとともに、このようなサービスの提供が、同条及びその趣旨に反するような事態を招来しないようにするためのガバナンス上の留意・推奨事項に関する指針を定めるものである(注3)。

    (注1)本ガイドラインにおける「ビジネス分野」とは、主として企業等の事業者(法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。)が自己の事業活動に関連して利用するAI等法務業務支援サービスの提供場面を指しており、消費者(個人であり、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)を主たる対象とするサービスについては、別途の考慮が必要となる場合があることに留意する必要がある。

    (注2)本ガイドラインは、生成AIだけでなくその他プログラムを含む様々なデジタル技術が活用されることが想定されるため、そのことを示す趣旨で「生成AI等技術」としており、本ガイドラインでは、以下「AI等」と略称する。
    また、本ガイドラインは、エンドユーザーに対して直接サービスを提供するサービス提供者を主たる対象とするものであるが、API(Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェース))等を通じて他のサービス提供者に対してAI等の機能を用いた法務業務支援サービスを提供する事業者についても、当該API等の利用目的・利用態様を認識し得る場合には、本ガイドラインの趣旨が及び得ることには留意する必要がある。

    (注3)本ガイドラインは、令和5年ガイドラインを補完・拡充するものであり、令和5年ガイドラインと併せて参照されるべきものである。その上で本ガイドラインが令和5年ガイドラインの内容を補完・拡充している部分については、本ガイドラインによるものとする。

    2 したがって、本ガイドラインは、令和5年ガイドラインで示した「報酬を得る目的」(同ガイドライン1頁から2頁参照)、「訴訟事件…その他一般の法律事件」(同2頁から3頁参照)、「鑑定…その他の法律事務」(同3頁から6頁参照)等の弁護士法第72条の個別の要件に関する基本的解釈や、これまで判例等で示された同条の解釈そのものを変更するものではない。

    また、同条で禁止される、いわゆる「非弁行為」に該当するか否かは、同条が罰則の構成要件を定めたものである以上、個別の事件における具体的な事実関係を前提として、同条の趣旨(最高裁判所昭和46年7月14日大法廷判決・刑集25巻5号690頁等で示されたもの。以下同判決を「最高裁昭和46年判決」という。)に照らして判断されるべき事柄であって、同条の解釈・適用は、最終的には法と証拠に基づく裁判所の判断に委ねられるということについても、同様である。

    第2 AI等法務業務支援サービスの提供の場面における「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関する「鑑定…その他の法律事務」取扱該当性

    1 AI等を用いたサービス提供の場面における規制対象行為の主体についての基本的な考え方

    弁護士法第72条は、罰則の構成要件を定めたものであり、対象となるのは、もとより人の行為である。
    AI等法務業務支援サービスに関して、現在サービス展開されている一般的な同種サービスの提供形態等を踏まえる限りにおいては、AI等に与える指示や質問の文章(以下「プロンプト等」という。)の入力を行い、そのプロンプト等に従ってAI等に自動的に出力結果を生成・表示させることなどの当該サービスの具体的な利用方法に関する最終的な判断は、基本的に、サービス利用者に委ねられている。

    もっとも、契約の目的、提供するサービスの内容・形態、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮した事実認定の問題ではあるが、特にサービス提供者によりサービス利用者に対して当該サービスが主体的・継続的に提供されていると勘案される状況において、例えば、当該AI等法務業務支援サービスに、サービス利用者によって入力されるプロンプト等に応じて自動的に法的観点の指摘、法的助言等の「鑑定…その他の法律事務」を提供することが目指された技術・機能等が備え付けられ、あるいは組み込まれているなどの場合においては、サービス利用者が自己の「鑑定…その他の法律事務」に関連する事柄を処理するために当該利用者がプロンプト等を入力するなどして当該サービスを利用することは、当該サービス提供
    の性質上、当然に行われることが想定されているサービス提供者側が企図していた法務業務支援の契機となるものにすぎないと考えられる。

    したがって、このような場合においては、当該サービス提供者の観点からすれば、サービス利用者の「鑑定…その他の法律事務」に関連する事柄を処理するために当該利用者がプロンプト等を入力するなどして当該AI等法務業務支援サービスを利用する行為は、サービス提供開始時点において、当該サービス提供の性質上の当然の因果経過として、サービス提供者がサービスの設計から提供を通じて実質的に主導・企図しているものといい得るから、規範的に評価すれば、プロンプト等の入力によりAI等により自動的に出力結果を生成し表示させるサービス利用者側の行為も含めて、サービス提供者の行為であると評価され得るものと考えられる(わいせつ電磁的記録等送信頒布等事件に関する最高裁判所平成26年11月25日第三小法廷決定・刑集68巻9号1053頁参照。以下同決定を「最高裁平成26年決定」という。)(注4)。

    (注4)最高裁平成26年決定は、わいせつな動画ファイルを記録した電磁的記録媒体の頒布に関し、ウェブサイトの運営者が、会員から投稿されたわいせつな動画ファイルを自動的に変換・保存し、会員である顧客がダウンロードできる状態に置き、不特定多数である顧客が同動画を入手するためには、顧客によるダウンロード操作が必要である場合において、当該運営者が自らわいせつな電磁的記録を「頒布」したと評価できるかが争点の一つとされた事案において、「被告人らが運営する前記(本件)配信サイトには、インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備え付けられていたのであって、顧客による操作は被告人らが意図していた送信の契機となるものにすぎず、被告人らは、これに応じてサーバコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信したというべきである。したがって、不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機とするものであっても、その操作に応じて自動的にデータを送信する機能を備えた配信サイトを利用して送信する方法によってわいせつな動画等のデータファイルを当該顧客のパーソナルコンピュータ等の記録媒体上に記録、保存させることは、刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録の『頒布』に当たる。」と判示している。

    そして、同決定に関する最高裁判所判例解説(刑事篇・平成26年度)343頁及び344頁が「本決定は、被告人らが運営する本件配信サイトには、インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備え付けられていたのであって、本決定も指摘するこれらの事実関係の下、規範的に評価すれば、わいせつな電磁的記録が顧客の記録媒体に記録、保存されたことは、被告人らの行為によるものと端的にいえるものと判断し、顧客の行為を実行行為の一部に取り込んだり、間接正犯の道具と捉えたりする必要はないと考えたものと理解される。

    …(中略)…なお、このように評価できるのは、顧客によるダウンロード操作が当初から織込済みの介在事情であったからであり、被告人らが意図せぬかたちでわいせつな電磁的記録が送信された場合には、頒布に当たらないとの評価になるものと思われる。」と言及している点に留意を要する。

    2 AI等を用いたサービス提供の場面における「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」取扱該当性についての基本的な考え方

    (1) 「訴訟事件…その他一般の法律事件」の意義

    ○事件性
    弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関して「鑑定…その他の法律事務」を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることを禁止しており、ここにいう「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務の発生する案件をいうものと解される。

    その上で、同条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に例示列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件」、及びこれらに準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するなど、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件であるという、いわゆる「事件性」(以下適宜「事件性」という。)が必要であると考えられる(弁護士法違反事件に係る最高裁判所平成22年7月20日第一小法廷決定・刑集64巻5号793頁等参照。以
    下同決定を「最高裁平成22年決定」という。)(注5)。

    そして、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等の諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる(令和5年ガイドライン2頁参照)。

    (注5)最高裁平成22年決定は、弁護士資格等がない者らが、ビルの所有者から委託を受けて、そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について、弁護士法第72条違反の成立が争われた事案につき、「このような業務は、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避の案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法72条にいう『その他一般の法律事件』に係るものであったとい
    うべきである。」と判示している。

    もっとも、「事件性」の要否及びその程度については、様々な見解があり得るところであり、結局は、個別の事案によるものであるが、本ガイドラインにおいては、「事件性」に関するこれまでの当省の立場(事件性必要説)を踏襲しつつ、同決定を参考に、以下「事件性」のある案件の当否の判断につき、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得るか否かという基準を用いている。

    (2) サービス提供者の「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」取扱該当性の判断基準

    ア サービスの設計・機能に関して考慮すべき基本的な考え方

    この点に関して、AI等法務業務支援サービス提供の場面においては、契約の目的、提供するサービスの内容・形態、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して個別具体的に判断する必要があるものの、一般的には、サービス利用者がサービス提供者から提供されたAI等法務業務支援サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」の用途で利用するか否かは、前記第2・1で触れたように、サービス利用者がチャットインターフェース(対話型画面)等を介して入力するプロンプト等に依存することになる。

    このように、前記第2・1のように、サービス利用者が当該サービスを利用することによる「鑑定…その他の法律事務」の取扱いについて、サービス提供者が当該行為の主体であると評価され得る場合であっても、サービス提供者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」にも、それには当たらない業務にも利用可能なAI等法務業務支援サービスを提供しているといい得るようなときには(例えば、そもそも「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを目指して設計されたサービスでないとき等。

    以下「価値中立的なサービス提供」という。)、単に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用される一般的可能性があることだけを捉えて、結果としてサービス利用者が自律的判断で当該サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用したという、サービス提供者にとって他律的・事後的要素により、サービス提供者が「事件性」のある案件に関して鑑定…その他の法律事務」を取り扱ったり、すなわち弁護士法第72条所定の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関して「鑑定…その他の法律事務」を取り扱ったと評価することは、責任主義の観点からも困難であるものと解される(注6)。

    換言すれば、前記第2・1の整理を踏まえると、サービス提供者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」を取り扱ったというためには、サービス利用者に対するサービス提供開始時点で、例えば、サービス利用者が当該AI等法務業務支援サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用することが、サービスの設計・機能に照らして具体的かつ現実的な可能性として当然に想定されている場合など、当該サービス提供の性質上、サービス利用者側の行為がサービス提供者側が企図していた法務業務支援の契機となるものにすぎないといえる事情が必要であると考えられる。

    具体的には、提供する当該AI等法務業務支援サービスの目的や中核的機能・設計、用いられている技術等の特性及び内容、さらにはサービス利用者の属性、リテラシーや利用目的等のサービス利用者側の事情等の諸般の事情を勘案して判断されるべきものであると考えられる。

    (注6)いわゆる(価値)中立的行為による著作権法違反幇助事件に係る最高裁判所平成23年12月19日第三小法廷決定(刑集65巻9号1380頁。以下同決定を「最高裁平成23年決定」という。)は、ソフト自体が適法な用途にも違法な用途にも利用できる価値中立的なソフトであること(ソフト自体に適法利用の有用性もあり、違法用途に特化したソフトではないこと)を判断の前提とした上で「…ソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも、単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり、それを提供者において認識、認容しつつ当該ソフトの公開、提供をし、それを用いて著作権侵害が行われたというだけで、直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきでない。」と判示している。

    イ サービスの用法に関して考慮すべき基本的な考え方

    このように「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されることを当然の前提としない、価値中立的なサービス提供と評価し得るような場合においては、サービスの設計・機能上は、サービス利用者による「事件性」のある案件への利用が当然に行われることは想定されておらず、基本的には、こうしたサービス利用者側の行為についてサービス提供者側が企図していた法務業務支援の契機となるものにすぎないとの評価は困難である場合が多いものと考えられる。

    もっとも、前記第2・1の整理を踏まえると、このようにサービスの設計・機能上、価値中立的なサービス提供と評価し得る場合であっても、例えば

    〇 こうしたサービスが現に「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていること、又はその具体的可能性を認識・認容してサービスを提供し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていると認められるとき

    〇 当該サービスの性質、サービス利用者による客観的な利用状況、提供方法等に照らして、サービス利用者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用する蓋然性が高いと認められる状況下において、サービス提供者もそのことを認識・認容しながらサービスを提供し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていると認められるときには、当該サービスの提供形態や用法に照らせば、当該サービス提供の性質上、サービス利用者側の行為がサービス提供者側が企図していた法務業務支援の契機となるものにすぎないと評価し得るから、サービス提供者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」の取扱主体として、弁護士法第72条違反の責任を問われるおそれは否定されないものと考えられる(注7)(注8)。

    (注7)最高裁平成23年決定は、前掲(注6)に続けて「かかるソフトの提供行為について、幇助犯が成立するためには、一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり、また、そのことを提供者においても認識、認容していることを要するというべきである。すなわち、ソフトの提供者において、当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識、認容しながら、その公開、提供を行い、実際に当該著作権侵害が行われた場合や、当該ソフトの性質、その客観的利用状況、提供方法などに照らし、同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で、提供者もそのことを認識、認容しながら同ソフトの公開、提供を行い、実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り、当該ソフトの公開、提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。」としている。

    その上で、同決定に係る事案の当てはめにおいては、提供者が現に行われようとしている具体的な違反行為を認識、認容しながら、当該ソフトの公開、提供を行ったものではないことは明らかである一方、ソフトとしての性質や、当時の客観的利用状況、ソフト提供者が対象を限定せずに、無償かつ継続的にソフトを提供していたことなどに照らして、当該ソフトの公開、提供行為は、客観的に見て、例外的とはいえない範囲の者がそれを違反行為に利用する蓋然性が高い状況の下での公開、提供行為であったことは否定できないとしつつも、この点に関するソフト提供者の主観面をみると、本件ソフトを公開、提供するに際し、本件ソフトを違反行為のために利用するであろう者がいることや、そのような者の人数が増えてきたことについては認識していたとは認められるものの、いまだ、同ソフトを違反行為のために利用する者が例外的とはいえない範囲の者にまで広がっており、本件ソフトを公開、提供した場合に、例外的とはいえない範囲の者がそれを違反行為に利用する蓋然性が高いことを認識していたとまで認めるに足りる証拠はないと認定し、犯罪の成立を否定している。

    (注8)もっとも、サイバー空間においてサービス利用者の物理的操作行為を含めてサービス提供者の行為として規範的に評価した事案に係る最高裁平成26年決定(注4)を前提とした上で、最高裁平成23年決定が幇助犯としての責任が問われた事案で前掲(注6)(注7)のように判示していることからすると、特にサービスの設計・機能上は、「事件性」のある案件への利用が当然に行われることが想定されていない価値中立的なサービスを提供しているサービス提供者について正犯としての責任を問う局面においては、正犯としての責任を基礎づけるに足りる事情が必要であり、少なくとも最高裁平成23年決定が考慮した要素につき同様以上のことがいえる状況になければ、刑事責任を問うことは困難であると考えるのが自然であるものと解される。

    ウ 以上の考え方を踏まえたサービス及び機能設計上の留意点

    以上の考え方を前提に、現状のAI等の性能、AI等法務業務支援サービスの実状等を踏まえて整理すると、サービス提供者によるAI等法務業務支援サービスの提供が「事件性」のある案件に関して「鑑定…その他の法律事務」を取り扱うものといえるか否かの分水嶺としては、まずは、当該サービスがその設計・機能上、価値中立的なサービス提供であるといい得るかどうかが重要であると考えられる。

    具体的には、例えば、①提供するサービスの設計、中核的機能、用いられている技術等が、法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを目指したものでなく、②また、こうした案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用に特化した、あるいは特化しているとまではいえなくても、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用が念頭におかれた特性・機能等(注9)を具有するものではないサービス提供行為は、サービスの設計・機能上、価値中立的なサービス提供行為といい得るものと考えられる。

    そして、このように①及び②の要件を充足することにより価値中立的なサービス提供行為であるといい得る場合においては

    〇 法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件について法的助言を行うものではないことや必要に応じて弁護士等への相談が必要となる旨等の注意・警告内容を明示する

    〇 サービス利用者による「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用動向を把握した際(注 10)には、弁護士への相談が必要である旨を確実に案内するなどの本ガイドラインの後記第3・2のガバナンス措置を講じるなどして、サービス利用者による不適切な利用を回避するための適切な体制を整備しているといい得るとき(③)には、もとより当該サービスの性質、サービス利用者による客観的な利用状況、提供方法など個別の事案によるものの、一般的には、当該サービス提供者によるサービス提供行為は、客観的に見て、サービス利用者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用する事態を企図してサービス提供を行っているものではないと評価し得、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への不適切な利用の蓋然性を低減してサービスの価値中立性を補完するとともに、サービス利用者によるこのような不適切な利用の蓋然性が高いことの認識・認容を否定する方向に働くものと考えられる(注 11)(注 12)。

    (注9)ここにいう「 『事件性』のある案件に関する『鑑定…その他の法律事務』への利用が念頭におかれた特性・機能等」とは、単にファイルをアップロードし、それに関してプロンプト等を自由に入力できるチャットボット機能等の範囲を超えて、例えば、「事件性」のある案件を具体的に処理することを主たる用途とするUI(User Interface(ユーザーインターフェース)。以下「UI」という。)等を設けていたり、利用規約・UIその他でこうした用途を積極的に案内する表示を行ったりするなど、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用を積極的に容認・助長するような特性・機能を具有する場合を想定している。

    (注 10)ここにいう「利用動向を把握した際」とは、例えば、サービス提供者がサービス利用者からのフィードバック、問合せ、利用ログの分析等を通じて、サービス利用者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に当該サービスを利用していること、あるいはその具体的な可能性を認識した場合をいい、サービス提供者に対して、積極的な監視義務を課すものではない。

    (注 11)なお、①②の要件は、主としてサービスの客観的性質に関わるものであり、③は、主として①②の要件による価値中立性を前提としたサービス提供者の主観的認識及び対応に関わるものであって、両者は相互補完的な関係に立つが、①②の要件が充足されない場合、すなわちサービスの設計・機能等が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用に特化した、あるいはこれを念頭に置いたものであるとき等には、③の措置を講じたとしてもそれのみで価値中立性が認められるものではないことに注意を要する。

    (注 12)最高裁平成23年決定は、ソフトの提供者が当該ソフトを公開、提供するに当たり、ウェブサイト上に違法なファイルのやり取りをしないよう求める注意書きを付記したり、開発スレッド上にもその旨の書込みをしたりして、常時、利用者に対し、当該ソフトを著作権侵害のために利用することがないよう警告を発していたことを一つの間接事実として、ソフトの提供者において、例外的とはいえない範囲の者が当該ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認めることは困難であるとの結論を導いている。

    このことからすれば、本件ガイドライン第3・2記載の適切なガバナンス措置を講じるなどして、サービス利用者による不適切な利用を回避するための適切な体制を整備していることは、サー
    ビス提供者において、「例外的とはいえない範囲の者が当該サービスを『事件性』のある案件に関する『鑑定…その他の法律事務』に利用する蓋然性が高いことを認識・認容しているとまではいえない」ことを指し示す事情の一つとなり得るものと考えられる。

    3 一般的なAI等法務業務支援サービスへの具体的当てはめ

    前記第2・1及び2で示した基本的な考え方を前提にして、令和5年ガイドラインにおいて契約書等関連業務支援サービスに関して示した考え方を敷えんする形で具体的に説明すれば、最終的には、契約の目的、提供するサービスの内容・形態、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情をもとに個別具体的に判断することになるものの、ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス一般についても、通常の業務に伴う、例えば、文献その他のリサーチ・法的問題点の検討業務支援、書面作成・審査・管理業務支援、社内における研修・経営判断の適法性確認等を含むガバナンス・リスク管理・コンプライアンス業務支援、内部通報事案の調査支援、新規業務スキームの構築・事業再編等業務支援、従業員・顧客・取引先等とのトラブルが発生した場合に会社としての対応方針を決定するための内部..調査..支援、株主総会・取締役会その他の会議業務支援等を目的とするサービスの提供は、その提供するサービスの設計、中核的機能、用いられている技術等が、法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを目指したものでなく、また、こうした案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用に特化した、あるいはこうした利用が念頭におかれた特性・機能等を具有するものではない限りにおいては、一般に「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されることを当然の前提としない、価値中立的なサービス提供であるといい得るものと考えられる。

    その上で、サービス提供者において、当該サービスは、法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関連して法的助言を提供するものではなく(注 13)、そのような案件に関しては、適切に弁護士へ相談するように確実に案内するなど、本ガイドライン第3・2記載のガバナンス措置を講じるなどして、サービス利用者による不適切な利用を回避するための適切な体制を整備している場合には、一般的には、当該サービス提供者によるサービス提供行為は、サービス利用者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用する事態を企図してサービス提供を行っているものではないと評価し得るものと考えられる。

    そして、もとより個別の事案によるものの、このような態様でサービス提供が行われている限り、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用された場合であっても、サービス提供者において、サービス利用者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に当該サービスを利用し得るという一般的可能性を超えて

    〇 現に同サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていること、若しくはその具体的可能性を認識・認容しているとはいえないようなとき

    〇 例外的とはいえない範囲の者が当該サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用する蓋然性が高いことを認識・認容しているとまではいえないようなときには、一般的には、サービス提供者において、「事件性」のある案件に関して「鑑定…その他の法律事務」を(業として)取り扱ったとは評価し難く、弁護士法第72条に抵触するおそれはないものと考えられる(注 14)。

    (注 13)例えば、法的紛議が現に顕在化している案件や、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件における訴状、準備書面、答弁書、証拠説明書その他の裁判所への提出書面や和解契約書等の法的紛議を前提とした対外使用書面を作成することや、こうした事案に関して法的助言を提供することは、これに該当するものと考えられる。

    なお、一般的な法的リスクの指摘(例えば、「この条項には訴訟リスクが生じる可能性がある」等)は、それ自体が直ちにこれに該当するものではないが、具体的な紛争案件に関連してなされる場合には該当し得ることに留意する必要がある。

    (注 14)令和5年ガイドラインにおいても、「いわゆる企業法務において取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合『事件性』がないとの当局の指摘に留意しつつ、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して、『事件性』が判断されるべきものと考えられる。」としている点は、このことを示しているものといえる。

    4 AI等法務業務支援サービスの提供につき、「事件性」のある案件に関して「鑑定…その他の法律事務」を取り扱ったと考えられる場合の具体例

    他方、以下のような場合には、サービス提供者による当該サービスの提供行為は、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを前提としていると評価され得るものであって、弁護士法第72条所定のその他の要件も満たすときには、同条に違反するおそれがあると考えられる。

    (1) サービスの設計・機能上「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを前提としていると評価され得るものの具体例

    例えば、法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件の処理を目指して設計されたサービスの提供や、弁護士の関与なしに訴状、準備書面、答弁書、証拠説明書その他の裁判所への提出書面や和解契約書等の法的紛議を前提とした対外使用書面を作成することに特化あるいはこうした作業への利用を念頭においた機能等を有するサービスの提供のように、サービスの設計、中核的機能、用いられている技術等が、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件、及びこれらに準ず
    る程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義があるなどの法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを目指したものであって、こうした案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用に特化した、あるいは、特化しているとまではいえなくても、単にファイルをアップロードし、それに関してプロンプト等を自由に入力できるチャットボット機能等の範囲を超えて、前掲(注9)に記載したように、こうした案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを念頭においた特性・機能を具有するものである場合には、当該サービスを利用する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用することを基本的に想定した上で当該サービスが提供されているものと考えられる。

    もとより個別の事案によるものの、このようなサービス提供において、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていると認められる場合には、一般的には、当該サービス提供行為は、当該サービス提供の性質上、およそ価値中立的なサービス提供行為とはいい難く、実質的に「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」を取り扱っているものと同視せざるを得ないものと考えられる。

    (2) サービスの用法上「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを前提としていると評価され得るものの具体例

    前記第2・2(2)イのとおり、サービスの設計・機能上は価値中立的なサービス提供であると評価され得る場合であっても、サービス提供の目的やサービス利用者による具体的な利用状況及びこれに対するサービス提供者の認識・対応のいかんによっては、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを前提としていると評価され得るときがあり、弁護士法第72条違反の問題が生じ得ることに留意する必要がある。

    すなわち、当該サービスの設計・機能上は、価値中立的なサービス提供と評価し得る余地があったとしても、例えば

    〇 非弁活動を現に行っている、あるいは行おうとする者に対して、それを認識・認容しながら、当該サービスを提供するケースや、当該サービスを「事件性」のある案件に継続的・反復的に利用しようとする者に対して、それを認識・認容しながら当該サービスを提供するケースなど、現に同サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていること、若しくはその具体的可能性を認識・認容しながら当該サービスを提供し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていると認められるとき

    〇 当該サービスの性質、サービス利用者による客観的な利用状況、提供方法等に照らして、サービス利用者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用する蓋然性が高いと認められる具体的な状況下で、これを認識・認容しながら当該サービスの提供を継続し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていると認められるとき等、この種「事件性」のある案件への一般的な利用可能性を超えて、サービス提供者において、サービス利用者による「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への具体的な利用状況(利用可能性)を把握している場合も想定される。

    もとより個別の事案によるものの、このような状況であるにもかかわらず、サービス提供者において、当該利用を回避するための合理的な措置(例えば、利用停止、警告の発出、弁護士への相談の案内、当該利用者に対するサービス利用範囲の制限、利用規約違反の指摘及び是正要求等)を講じることなく漫然とサービスを継続して提供するような場合には、一般的には、前記第2・4(1)の場合と同様、サービス提供者による当該サービス提供行為は、サービスの提供形態・用法の点から、当該サービス提供の性質上、実質的に「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」を取り扱っているものと評価せざるを得ないものと考えられる(注 15)。

    (注 15)令和5年ガイドラインにおいて、「例えば、取引当事者間で紛争が生じた後に、当該紛争当事者間において、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合には、法律上の権利義務に争いがあり、あるいは疑義を有するものとして『事件性』が認められることから、このような場合の契約書等の作成について本件サービスを提供するときには、『その他一般の法律事件』に該当し得ると考えられる。」としている点は、このような解釈を示したものといえる。

    (3) 小括

    以上のとおり、最終的には事実認定の問題であるものの、前記第2・4(1)(2)のような各サービス提供行為については、一般的には、当該サービス提供の性質上、サービス提供者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」を(業として)取り扱っているとの指摘は免れ得ず、令和5年ガイドラインにおいて示された弁護士法第72条所定のその他の要件も満たすときには、同条に違反するおそれがあると考えられる。

    第3 弁護士法第72条及びその趣旨を踏まえたサービス提供上の留意・推奨事項

    1 総論

    前記第2及び令和5年ガイドラインを前提としても、弁護士法第72条で禁止される、いわゆる非弁行為に該当するか否かは、同条が罰則の構成要件である以上、個別の事件における具体的な事実関係を前提として、同条及び最高裁昭和46年判決において示された、弁護士以外の者が他人の法律事件に介入することを業とすることを放置することにより、「当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになる」ことから、これを禁圧するために設けられたとする同条の趣旨に照らして判断されるべき事柄であって、最終的には、法と証拠に基づく裁判所の判断に委ねられるものである。

    そのことを前提に、実務上の対応としては、AI等法務業務支援サービスに関しては、現時点では、いわゆるハルシネーションや出力結果におけるバイアス等が完全に払拭できないなどの現状のAI等の技術的限界等に伴うリスクを一定の前提とせざるを得ず、仮にガバナンスが十分に機能しておらず、また品質や信頼性の担保に乏しいサービス提供が広く行われた場合には、サービス利用者その他の関係者の利益を損ないかねない。また、こうした劣悪なサービスが広く社会実装されれば、法律秩序を害し、ひいては同条の趣旨を没却し、同条の保護法益が害される事態を招来しかねない。

    このような問題意識に基づき、サービス提供者においては、適切なガバナンス上の方策を検討・実施することが肝要である。

    さらに、本ガイドラインによる整理を踏まえても、前記第2・4のとおり、当該サービス提供の性質に照らし、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを前提としたサービス提供を行えば、同条所定のその他の要件にも該当する場合には、同条の禁止する非弁行為となる可能性がある。

    そのため、サービス提供者は、自己が提供するサービスが同条の規定に抵触しないように十分に配意するとともに、そのリスクを回避・払拭するため、同条及びその趣旨を没却しない慎重な設計及び運用を行うことが重要である。

    そこで、前記第2及び令和5年ガイドライン記載の整理を踏まえつつ、サービス提供者が予測可能性をもって事業展開ができ、かつ、我が国のAI等法務業務支援サービス業界全体の健全性を維持し、同条及びその趣旨を没却することのない適切なサービスの提供を行うためには、以下の点に留意し、提供するサービスの性質・内容等に応じた適切なガバナンス措置を講じることが推奨される(注 16)。

    (注 16)もっとも、弁護士又は弁護士法人が自らAI等法務業務支援サービスを開発するなどして自らがサービス提供者となる場合、若しくはサービス提供者からAI等法務業務支援サービスの提供を受け、その出力結果を前提として弁護士又は弁護士法人の名義と責任において判断を行い、「鑑定…その他の法律事務」を提供する場合(弁護士・弁護士法人による提供(弁護士提供モデル))や、①弁護士又は弁護士法人に対してサービスを提供する場合であって、当該弁護士又は弁護士法人がその業務として「鑑定…その他の法律事務」を行うに当たり、当該弁護士又は当該弁護士法人の社員若しくは使用人である弁護士が、当該サービスを利用した結果も踏まえて自ら精査し、必要に応じて自ら修正する方法で当該サービスを利用するときや、②弁護士又は弁護士法人以外の者に対して当該サービスを提供する場合であって、当該提供先が当事者となっている案件について、当該サービスを利用するに当たり、当該提供先において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士が前記①と同等の方法で当該サービスを利用するとき(弁護士・弁護士法人等に対する提供(弁護士利用モデル))は、
    令和5年ガイドラインにおいても示したとおり、直ちに弁護士法第72条に抵触するものではない。

    しかし、同条の趣旨やその保護法益を踏まえると、こうした場合であっても、サービス提供者には、現状のAI等のリスクを踏まえた適切なガバナンスを構築することが期待される。

    2 ガバナンス上の具体的留意・推奨事項

    (1) AI事業者一般に共通するガバナンス上の留意・推奨事項の履践

    サービス提供者においては、提供するサービスの内容や取り扱うデータの類型等に応じ、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)、著作権法(昭和45年法律第48号)のほか、個人情報、知的財産権等にそれぞれ適用される法令に適合した取扱いを確保することが重要である。

    それとともに、サービス提供者においては、AI活用に取り組むすべての事業者向けに総務省及び経済産業省が発出している「AI事業者ガイドライン」その他の各種の政府指針等において推奨されているAI等システム実装時におけるリスク対策、サービスの適正利用に資する提供、AI等システム・サービス構成及びデータに含まれるバイアスへの配慮、プライバシー保護のための仕組み及び対策の導入、セキュリティー対策のための仕組みの導入、システムアーキテクチャーの文書化、適切な目的でAI等システム・サービスが利用されているかの定期的検証等、プラ
    イバシー侵害への対策、脆弱性への対応、関連するステークホルダーへの情報提供、サービス利用者への前記「AI事業者ガイドライン」所定の「共通の指針」の対応状況の説明並びにサービス規約等の文書化等の自主的な取組を行うことが重要である。

    (2) AI等法務業務支援サービス特有のガバナンス上の留意・推奨事項

    ア 日本国内におけるインシデント対応窓口等の設置

    日本国内においてAI等法務業務支援サービスを提供するサービス提供者においては、弁護士法に違反した場合には、同法所定の規律に服し得ることから、日本国内のサービス利用者その他の関係者からの問合せ・通報その他同法に違反するなどのインシデント等の発生に対応する窓口を設けることが推奨される(注 17)。

    (注 17)なお、外国法人が日本において継続して取引をしようとする場合には、会社法(平成17年法律第86号)その他の関係法令に従う必要があり、日本における代表者(この場合において、その日本における代表者のうち1人以上は、日本に住居を有する者でなければならない。)を定め(会社法第817条第1項)、外国会社の登記等の手続(同法第818条第1項)等の必要な措置を適切に履践することが必要である。

    また、クラウドサービスとして提供される場合であっても、日本国内のサービス利用者に対して継続的にサービスを提供するときには、実質的な対応が可能な窓口を日本国内に設けることが推奨される。

    イ 弁護士によるサービス及び機能設計等への実質的関与による学習データ・出力結果の品質・信頼性の確保等

    (ア)提供するサービスがいわゆるナレッジマネジメントやユーザーデータ内からの情報の検索・要約といった機能を超えて「鑑定」等にわたり得る機能を有する場合(令和5年ガイドライン3頁から6頁にあるとおりであり、例えば、個別の事案における契約等の法律行為に至る経緯・背景事情・行おうとする契約等の法律行為の内容等を法的に処理して当該処理に応じた具体的な契約書等の法律行為関係データ案や修正案等が作成される機能、具体的な事案に応じた法的リスクの有無や程度・個別の法的対応の必要性等を抽出・摘示する機能等もこれに該当し得る。)には、こうしたサービス及び機能設計において、我が国の弁護士資格を有する者が監修、あるいは実質的に関与していること(形式的な名義の貸与にとどまらず、当該弁護士資格を有する者が実際に以下のようなサービスの設計・機能・出力の方法等について適切にアドバイスを行うなどの具体的な関与をしていること)が望ましい。

    具体的には、

    〇 機能要件策定・仕様レビュー・変更管理における品質確保のための検証

    〇 表示・免責・サービス利用者ガイダンス等のリーガルチェック等の場面において、我が国の弁護士資格を有する者が実質的に関与し、サービスの品質及び信頼性確保に努めることが重要である。

    (イ)その上で、生成AIにおけるRAG(Retrieval-Augmented Generation:事前に学習した情報だけでなく、外部データベースから関連情報を検索・参照する検索拡張生成機能)や学習データ、出力内容の性質・制約について、サービス利用者に十分に説明することが重要である。

    また、最新の公式情報等信頼性の高い情報源が優先的に表示されるように努めるなど、弁護士法の趣旨を踏まえた学習データや出力結果等の品質及び信頼性の担保を講じておくことが重要である。

    ウ 誤認を与える表示の不使用及びサービス利用者の適格性確保

    (ア)サービスの提供に当たっては、広告や提供するサービス名等はもとより、AI等による出力結果が、例えば、弁護士に代わる判断を提供するものであるとか、法的結論の正確性を保証するものであると想起させるような、サービス利用者に誤認を与えるおそれがあるような表現は厳に慎むべきである。

    (イ)こうしたサービス利用者の誤認リスクは、前記のような積極的な表現を行っていない場合であっても、サービス利用者側がAI等を信頼しすぎることによっても発生し得る。

    そのため、こうした誤認リスクを防止するため、例えば、以下の観点の配慮等を行うことも推奨される。

    a サービス利用申込時の合理的確認措置の実施

    弁護士又は弁護士法人ではない者、具体的には企業等の事業者向けにサービスを提供する場合には、サービス利用者の属性・利用目的について、利用申込時の審査等の合理的な確認措置を行い、前記第2・4(2)を踏まえ、非弁活動を企図している者への提供等、用法上、弁護士法第72条に違反する疑いのある提供は厳に行わないようにしなければならない。

    b 利用規約等への明記・ガイダンスの実施

    また、当該サービス利用者の属性やリテラシーの程度に照らし、サービス提供に当たって

    〇 AIは、弁護士等の専門家に代わる最終的な判断をするものではなく、回答は飽くまで参考情報にすぎないこと

    〇 提供するサービスは、法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義があるなどの法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関連して、法的助言を提供し、こうした案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させる目的で提供するものではないこと

    〇 法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関しては、内容及び必要性等に応じて、弁護士に相談し、その判断を仰ぐ必要があること

    〇 サービス利用者(法人の場合は、当該法人)の自己の業務にのみ利用し、他人の法律事務を取り扱うためには使用しないこと(注 18)

    〇 サービスの利用に当たっては、弁護士法その他の関係法令を遵守するとともに、利用規約に違反する利用はしないこと

    など、不適切な利用がなされないための核心的な遵守事項については、サービス利用者に対して確実に説明することが重要である。

    併せて、これらについて利用規約等に規定した上で、例えば、サービス利用者からの同利用規約等への同意の取得、サービス利用者による同利用規約等の遵守の宣誓(自己宣誓)、その他前記のようなサービス利用上の留意事項に関して事前のガイダンス・チュートリアル等を行うなど、サービス利用者による適正な利用を確保するための適切な措置を講ずることが推奨される。

    c 重大な利用規約違反等があった場合の利用停止措置等

    サービス利用者に当該サービスの犯罪利用その他の重大な利用規約違反が認められた場合(注 19)においては、サービスの利用契約等を解除するなどのサービスの利用停止等の適切な措置を講ずることは、サービス利用者による不適切な利用を放置しないという観点から極めて重要である。

    また、サービスに関する利用者等からサービス提供者へのフィードバック・相談等の場面において、サービス利用者による「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用がうかがわれる場合には、対応に際し、その内容に応じて、「当該サービスは、弁護士に代わる判断を提供するものではないこと」「AI等による出力結果が法的結論を保証するものではないこと」その他第3・2(2)ウ(イ)bの核心的遵守事項の内容を改めて説明することなどによってサービス利用者の誤認を解消するとともに、内容及び必要性等に応じて、弁護士法第27条及び同法第72条所定の「周旋」に当たらない範囲で弁護士へ相談すべき旨を告げる等の適切な対応をとることが重要である(注 20)。

    (注 18)ここにいう「他人の法律事務を取り扱うため」とは、弁護士法第72条が禁止する非弁行為に該当するような態様で第三者の法律事務を取り扱うことを意味する。
    例えば、企業グループ内において親会社の法務部門が令和5年ガイドライン及び本ガイドラインの範囲内で子会社・関連会社の法務業務を支援するためにサービスを利用することは、通常これに該当しないものと考えられる。

    (注 19)例えば、サービス利用者が虚偽の申告をして、非弁活動を含め利用規約等に違反した場合や、サービス提供者からの指摘・警告にもかかわらず、サービス利用者が利用規約等に違反する利用行為を反復継続しているような場合等が考えられよう。

    (注 20)弁護士法第27条は、「弁護士は、第72条乃至第74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」と規定しており、弁護士が非弁業者から事件の周旋を受けることを禁止するものである。
    同条の趣旨に照らせば、非弁業者が特定の弁護士に特定の案件を継続的・反復的に紹介する行為は同条の禁止する行為に抵触するおそれがあるものと考えられる。
    他方で、サービス提供者が弁護士への相談を一般的に案内することは、特定の弁護士への特定案件の紹介には当たらず、同条の禁止する行為には該当しないものと考えられる。

    エ 利用上の留意事項のプロンプト等入力前段階・出力結果等への明示

    サービス提供者がサービス利用者に対してサービスを提供するに当たっては、UI等に入力上のガイドラインを設けるなどするとともに、例えば〇 提供するサービスは、法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義があるなどの法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関連して、法的助言を提供し、こうした案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させる目的で提供するものではないこと

    〇 法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関しては、内容及び必要性等に応じて、弁護士に相談し、その判断を仰ぐ必要があることなど、提供されるサービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」には利用できないことなどのAI等の利用範囲・利用禁止事項等のサービス利用上の留意事項(断り書き・ディスクレーマー。以下「ディスクレーマー」という。)をサービス利用者がプロンプト等を入力する前の段階や出力結果等に明確に表示することが重要である。

    こうした内容を利用規約だけでなく、画面表示やチュートリアルにも組み込むことにより、サービス利用者が当該サービスをどのような案件に利用してよいかを直感的に理解でき、誤認防止効果が高まるものと考えられる(注 21)。

    (注 21)なお、ディスクレーマーの具体的文言やディスクレーマーを表示させる場所については、飽くまで例示であり、弁護士法第72条及び本ガイドラインの趣旨を踏まえて、サービス提供者において、誤認防止効果の高い方法を適宜検討することが求められる。

    オ UI・機能設計上の配慮

    (ア)前記第2・4(1)(2)を踏まえ、提供するサービスを、サービス利用者が「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用することその他不適切な用途に用いることを誘発しないようなUIや機能設計を行うとともに、例えば、「事件性」のある案件に利用されるおそれの高い機能(高リスク機能)には、注意表示の強化(例えば、視覚的強調、レイアウトによる強調、注意・警告文言の強化、インタラクション(操作性レベル)の強化)を図るなどの適切なリスク低減措置をとることが重要である。

    (イ)AI等による出力結果に含まれる情報については、サービス利用者に対してその正確性・信頼性に関する誤認等のリスクを与えないよう、根拠や参照元の情報を表示できる場合には、これらを明示することが重要である。
    その上で、根拠又は参照元の情報を表示できるものについてはこれらの情報を表示する旨をサービス利用者に説明することが推奨される。

    (ウ)前記第3・2(2)エのようなディスクレーマー表示のほか、システム上から日本弁護士連合会が運営する弁護士の検索・情報提供サービスである「ひまわりサーチ」や「日弁連の弁護士検索」を案内するなど、前掲(注 20)の趣旨に従った範囲で弁護士への相談を推奨する仕組みを採用することにより、法的紛議が現に顕在化している案件や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件に関しては、弁護士法の趣旨に従い、サービス利用者が当該サービスを利用して「鑑定…その他の法律事務」を行うのではなく、内容及び必要性等に応じて、自発的に弁護士に相談することを促すための補完的措置を講じることも推奨される(注 22)。

    (注 22)なお、本ガイドライン策定における検討の過程においては、サービス利用者による「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」への利用を実効的に予防し、サービスの価値中立性を高めるために、例えば訴状、準備書面、答弁書、証拠説明書その他の裁判所への提出書面や和解契約書等法的紛議を前提とした対外使用書面等の「事件性」のある案件に関する出力に制限をかけるなどの措置(入力を制限あるいは出力自体をさせない措置。以下「出力制限」という。)についても検討を行った。

    この点に関し、AI等法務業務支援サービスの提供事業者等からは、専ら当該AI等法務業務支援サービスが利用している汎用型AIの出力の問題であることに加え、現在の技術の水準では、提供するサービスに対するコスト面・効用面での多大な支障なしに適切で実効性のあるガードレールを設けることが技術的に困難である上、出力制限の範囲・基準の設定が恣意的になりやすく、過剰遮断をすれば、問題のないサービス利用についてまで大幅に利便性を削いでしまいかねない一方で、書式変形や抽象化出力により制限回避が容易であるとの意見がなされた。

    他方、法曹実務家からは、実効性が完全でなくとも、例えば「訴状、答弁書、準備書面といった裁判手続での利用以外の用途がおよそ考え難い表題を有する書面」のうち主要なものを限定的に特定し、それらの作成の指示に限って出力制限を課すことは、技術的には可能であるとの意見もある上、一定のコストがかかることは出力制限を行わないことを正当化する理由にならないのではないかなどの意見もあった。

    当省としては、これらの意見も踏まえた上で、現時点の技術水準等に照らせば、弁護士法第72条との抵触が生じ得ない適法な出力に影響を及ぼさない方法で、実効的あるいは合理的な出力制限の範囲を明確化することは困難であること(逆に範囲を明示せずに出力制限をガバナンス推奨事項とすることによる萎縮効果は大きい。)、また、実効性が低く規制効果も極めて限定的であるにもかかわらず、サービス提供者に与える事業上の多大な支障を伴う措置を推奨事項とすることは相当でないことから、出力制限については、今後の技術の進展等を踏まえたサービス提供者の自主的な判断に任せることとし、今回本ガイドラインにおける留意・推奨事項として明記することとせず、今後の検討課題とすることとした。

    もっとも、サービス利用者において、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に当該サービスを利用し、AI等による出力結果をたやすく信用して、適切に弁護士に相談することなく、その出力結果を対外的に使用することを放置することになれば、弁護士法第72条の趣旨を没却しかねない。

    その結果、サービス提供者においては、自社の信用はもとより、AI等法務業務支援サービス業界全体の信頼性・健全性を害する事態になることを十分に自覚した上で、実効的なセーフガードの枠組みを含めた適切なガバナンスの在り方を不断に検討していくことが重要である。

    その上で、現状、サービス提供者においては、出力制限を行うことが困難であるとするならば、サービス利用者に対するリテラシー向上に努めるほか、サービス利用者による不適切な利用が行われた、あるいは行われる疑いがあると把握・認識した場合には、サービス利用者に対して適切な利用を促す注意・警告を発するのみならず、悪質なケースにおいては利用停止に向けた必要な措置をとるなどの対応を確実に行っていくとともに、今後の技術の進展に応じた実効的なセーフガードの実施を含めた適切なガバナンスの構築をはじめ、AI等法務業務支援サービスの適切な利用の確保・普及に自主的に取り組むことが期待される。

    第4 附則

    なお、本ガイドラインは、AI等の技術の進展、サービスの普及状況、関連する法令・判例実務の動向等を踏まえ、必要に応じて適宜見直しを行うものとする。